第4話大噴火

「さて、シスターエルナ。なにか弁解はありますか?」


「あります! 聞いてくださいゼノ! 実は今回────私悪くないのです!」


 ……この人は何を言っているのだろうか? 私は悪くない? 正気か?


 今回の被害はやはり過去最高でした。教会の扉はもちろん、教会の中も半壊、2階の自宅も吹き抜け状態になっている。

 誰が犯人かと言われれば、もちろんシスターエルナ以外には考えられない。


 なにを隠そうこの人は、この大国ヘルネイド王国の中でも3本指に入るほどの実力を持つ魔法師なのだから。

 しかも火、水、雷、風、土の5大属性全ての適性を持っている。

 魔法師というのは、簡単に説明すると自然界に存在する微細なエネルギー体を自身の魔力で操作して使役する人達の事ですね。

 これは、なろうとしてなれるものではなく、先天的な素質がないとなれません。

 素質がなければ、そもそもエネルギー体を認識することすら不可能なのです。

 

 魔法師は下位、中位、上位、高位、超位の5段階に区分されますが、もちろんシスターエルナは超位の魔術師さんです。

 超位魔法師はこの国に3人、世界規模で見ても10人に満たない程度のごく少数しかいないので、この人の才能が別格なのは言わずもがなでしょう。

 まぁ、この人に勝てる人間はそうそういないでしょうね。


 超位魔法師と言われるからには当然、魔力値は高いです。

 なので、使用する際は加減するのが当たり前なのですが……この人は、恐ろしいくらいに加減が下手くそなんです。神経バグってんじゃない? というレベルで。

 なのに! バンバン魔法使うからその度に教会が壊れるんですよ! このバカ! 狂人シスターめ!



 失礼。少々過激な表現をしてしまいました。話を戻しましょう。


「一応、言い訳は聞きましょう。なぜ、悪くないと?」

「さすがはゼノです! サリーは聞く耳すら持ってくれませんでした! まったく、あの子は優しさをどこに置いてきてしまったんでしょう?」


 あなたのこれまでの行動がサリーを変えてしまったんですよ? と、言って差し上げたい。


「それで?」

「はい、実は……あの殿方達にはずかしめを受けそうになりまして……怖かったので吹き飛ばした後に爆破しました!」


 いや、ちょっと待て! 吹き飛ばすのはまだ分かりますよ? でも、さすがに爆破は過剰防衛すぎません⁈

 なるほど、この壁の焼け跡はそうゆう事か。

 おおかた、シスターは牽制のつもりで爆破したんだろう。

 そして、その爆破で扉と室内を破壊したと。

 ふむふむ、原因は理解しましたよ。えぇ、理解しましたとも。


 加減のしかたー! なんで牽制で教会破壊してんの? バカなの? 

 ハッ! まさか……


「ちなみに、どこに爆撃を当てたんですか?」

「どこって……あなたなら見て分かるでしょう? 上よ、うーえ──────てへっ」


「────てへっじゃねーよ! アホなのか⁈ いーや、聞く必要もないわ! このボケカスが! なんで! 牽制で! 天井ぶち開けてんだ⁈ どーせなら風魔法で外に追い出して、外に牽制しろよ!」

「ゼノ────あなたは天才なのかしら?」

「てめーの脳みそがたりてねーんだよ! このボンクラが!」

「それはそうと、あなた口調が昔に戻ってるわよ? 私は慣れてるから構わないのだけれど、サリーや街の皆さんはどう思うかしら?」


 あ、やべーやべー、じゃない! 危ない危ない、ついブチギレすぎて我を失っていました。

 落ち着け、シスターエルナは何を言っても反省をしないのは明白だろう。本気で怒るだけ無駄だ。

 ならば、ここは絡め手でいく!


「シスター、本日のあなたのお夕飯は蒸かし芋のみです」

「…………え? ちょ、ちょっとゼノ? なぜ私のお夕飯が蒸かし芋のみなのでしょう?」


 フフッ、シスターはサリーのような真正面からのお説教は通用しません。が、この人の性格は子ども同様。物で釣るのが最も効率的なのです。

 サリーは少し不器用ですから、こうゆう心理的な駆け引きはあまり得意じゃないんですよね。

 そろそろ教え時かもしれませんね。


「ゼノ? 聞こえていますか?」

「ええ、もちろん聞こえていますよ? シスターエルナ。理由がお分かりになりませんか?」


 さて、ここからは私のターンですね。目一杯反省していただきましょう。



 

 

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