第3話 タコ焼きハーレム
時出俊平。俺の親友と言ってもいいぐらいの硬派なやつ。……だったが、バレーの県大会の活躍により、女子高生たちが群がる中に飛び込むと、こうも簡単に男の友情と言うのは、裏切られるものなのかと思った。
だが、誘われたタコパは、ある意味俺の女子恐怖心を克服する絶好のチャンスだと思い参加することを決意した。否、単なるモテたい……。
という不純な動機は敢えて隠しておこう。だって俺ももう16歳の思春期真っ盛りだもなぁ!
「何ニヤついてんだ。カナブン。かずみちゃんの家前で!」
そうもうすでに県大会で知り合ったという竹中かずみちゃんの家の前だった。この口角が右上に挙がった状態を右の人差し指で何気に戻し、何事もなかったように笑顔になる。時出はチャイムを鳴らしていた。
暫くすると、ロングヘアにタータンチェックの目元がクリッとした女の子が返事よく出てくる。
「ああ、来てくれてありがとう。みんなお待ちかね。ささっ、入って」
「こちらこそだよ。お邪魔しまーす!」
時出と共に二人声をあげながら、かずみちゃん家に上がり込む。するともうすでに他のメンバー3名は、たこ焼きを焼きながら俺たちを待っていた。
「陽子でーす」
「私、
「あたし、姉の
「どもぉーーはじめまして、
「俺は、
「二人とも知ってますよぉ。この有名人!」
そんな言葉に驚いた俺は聞き返した。
「俊平の事は毎試合出てたから知ってる思うけど、俺もなん?」
その問いに対しての女性陣の答えは一様に笑顔でYESだった。たった2試合しか出ていない俺を知っている女子がいた。そう思うだけで、胸は高鳴り笑顔に満ち溢れた。そして、俺のそんな思いは再度乾杯の掛け声に現れていた。
「ヒューー。その図太い俊平ちゃんとは違い、ちょっと甲高い乾杯もいいね?」
褒められているのかいないのか、どっちとも取れる言い回しだったが、笑顔でグイッとジュースで喉を鳴らし、焼き加減を見るために、ピックをくれとかずみちゃんに要求した。
「要いっきまーす!」
意気揚々にピックをたこ焼きに差し込み半分焼けたたこやきをひっくり返す。
「おぉ!? うまいじゃん。その手つきは手練だね?」
姉の桃華さんが俺の肩に腕を乗せて迫る。片手には一人だけビールジョッキ。高校生の中に一人20歳を迎えた大人の色香。たこ焼きの臭いとは別にいい匂いを醸し出している感じがしていた。
燕ちゃんが一人、わたしにもできますと俺に対抗心を燃やして、メイド服のような格好でたこ焼きと格闘し始める。そんな楽しくもあり、戦いでもあるタコパが始まった。男性二人だけで他4名は女性というハーレム状態。俺は終始笑顔を振りまいていた。いやいつの間にか笑顔というより、鼻の下が伸びる。
そんな態度を察してか、かずみちゃんが俺を避けて、やはりというか俊平とべったり話すようになった。そのうち、俺を放ったらかしにして、二人二階へと挙がっていった。もちろん男は俺一人。ハーレムがよりハーレム!
かずみちゃんの両親も外出中で、3人の女性に囲まれた俺は少し照れくさくなり、トイレに席を立った。キッチンを抜けて、用を足してトイレから出ると洗面所に、姉の桃華さんが、色目つきで俺に立ちふさがった。
「あっ?桃華さんもトイレですか?ごめんなさい。お待たせしましたよね?」
そんな言葉を軽く聞き流し、桃華さんは色目つきで俺に向けて、ピストルのように手を向けた。
「バーン、ねぇ ちょっとお酒買いに行くのついて来てよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます