第2話 姑息な思い

 女子に馬鹿にされた俺は、女という生き物が心底嫌いになった。もう硬派に生きてやろう。この先女など絶対にいらない。そんな思いで俺は高校を男子校に選択した。中学時代から続けていたバレー部にも入った。


 決してモテたい訳ではない。俺は硬派を選ぶために日々部活に力を注いだ。朝練。それが終わると授業。そして夕方から夜遅くまで、白いボールを追いかけた。


 ある日の部活終わり、部活仲間でもあり、同じクラスの時出俊平ときでしゅんぺいが天然ではない、軽くかかかったウェーブの髪を手で巻ながら俺に言ってきた。


「なぁ、来月の県大会の合宿後には、俺たちもっと男らしく成長してんだろうな!先輩たちに揉まれて、バレーもうまくなって、もしかしたら大会にも出場できるぐらいのレベルにもなれるかも?頑張ろうぜ!」

「あぁ、俺たちは硬派を貫くんだろ!?」

「そうだよ。そのために、この高校に来たんだから!」


 だが、運命は残酷だった。

 夏休みの県大会が始まると、準レギュラーとして、時出俊平がコーチに呼ばれてコートに立った。そして見事バックアタックを決めると会場からぞよめきと悲鳴にも近い歓声が挙がった。


 それは、まぎれもない若い女の歓声。必死に立ち向かっていた時出が急に笑顔に変わり、体育館の2階上席に向けてガッツポーズを送る。するとまたもや歓声が挙がる。


 何故だ! こいつは何を目論んでいる!こいつ女好きなのか?そう思わせる程のガッツポーズ振りに俺は少し機嫌が悪くなった。

 そして試合後、体育館から出ると時出に待ち受ける女子の波。握手や写真を求める俺たちと同じ高校生か、中学生女子の姿。俺はと言うと試合に出れずにただそれを眺めるしかなかった。

 試合を追うごとに、準レギュラーとして出場して行き、益々帰り際のバスの乗り口前には女子の人だかりが時出を求めてやってきているのがわかった。

 俺の県大会出場はというと途中出場の2試合のみ。残念ながらウチの学校は準決勝で敗れてしまったが、一年の俺たちが出場できたのは、それなりに嬉しかった。

 試合後、みんなして涙を流した。


「来年は俺たちが先輩たちの分まで、大会を盛り上げていこうな!」


そう俺は、時出に声を掛けた。時出もその言葉に頷いた。

……だが、時出は裏切った。


 急に成長した自分自身と歓声が挙がった大会での出来事で、時出は女に走った。

あれだけ、「硬派に生きような!」と誓った男の友情は無残にも崩れ去り、県大会終了後、時出は、俺に「タコパあんだけど、一緒に行かね?」と誘ってきた。


「裏切り者! 硬派に行こうぜと言ったじゃんかぁ!」

「馬鹿野郎! 俺たちだけでつまんねー夏休み送るより、女の子も混ぜた友好関係作るのも良いだろう!? お前行かないなら俺だけで行く……」


 その言葉に俺は躊躇ったが、渋々その言葉に釣られて、たこ焼きパーティに参加した。

 そこで俺は男の友情を無くす結果になるとは思ってもいなかった。

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