モテない男子の自虐的日記

北条むつき

第1話 モテない男子の妄想

 俺、増山要ますやまかなめ、通称名:カナブンは、モテたことがない。最後にモテた記憶。それは幼少の頃、女の子とままごとをして夫婦役をして遊んだ記憶。だがそのままごとのお嫁さんにも、いつの間かに逃げられた。


 それ以降、小中高とモテた記憶は全くない。小学生の頃は、背が小さく女子と変わらない背丈か、むしろ女子にも負けていた。そんな俺にも好きな女子が出来た。学級委員長の女子、財田優希さいだゆき。学校帰りに校庭に呼び出して告白をした。だが、「チビとは付き合えない」と罵られて俺の恋は終わった。


 中学に入っても、背は低く、全くモテない。

 小学生の頃の告白に懲りて、もう好きになるものかと思った。だが、そんな中でも、普通に話してくれる女子もいた。それに家にも遊びに行ったりする仲。部活も一緒のバレー部、金田朋美かねだともみ


 俺は背が小さくてレギュラーになれなかったが、彼女は背も高く、すらりと伸びた足と長い腕でレギュラーだ。そんな彼女に憧れていた。金田朋美かねだともみの事が徐々に気になり出した中学2年の夏。


 昼の休憩時間に、突然、金田朋美かねだともみとその友達たちの女の子が近寄ってきて、俺に尋ねた。


「ねぇ、増山君ってさ?好きな女の子いるの?」

「はぁ? 何突然?」

「ねぇ? 増山君はこのクラスの女子でキスしたい子いる?」


 頭の中で、思わず妄想している自分がいた。

金田とキス! キス!? キスキスキスキス! そんな思いに狩られると、赤ら顔になってしまった俺。


 固まってしまったが、頭の中は金田朋美かねだともみを思い思わず見てしまった。すると、金田朋美が突然俺の顔を覗き込み……。


「顔真っ赤よ? もしかしてわたしかなぁ? かわいい! キャハハハハアハハ! する? してもいいわよぉ?」


 うおおおおお!

 心の叫びが漏れそうに思わず口を抑えた。


 その口を抑えた態度が、吐きそうだと見えたのか、金田朋美はいきなり俺に言い放つ。


「な訳ねぇーだろ、バーカ!」


 金田は一瞬悪い顔をして、俺に舌を出して友達と笑い合い教室から出て行った。

 自業自得とは言え、女なんてみんなこんな感じだ。人の心をかきむしる。思わせるだけ思わせておいて、結局は馬鹿にする。所詮今回もそうなんだって思った。


 極め付けは、クラスの図書委員をしていた時。クラスの女子図書委員、飯村佳子いいむらよしこと一緒に先生に呼ばれて、クラス全員の教科書を二人で運んでいた時だった。重たいからと飯村の分を優しさで半分ぐらい持って階段を上がっていた。突然ふらついた飯村を俺は助けるために、教科書を投げ出して、飯村の腕を掴んだ。


 だが、階段の下へと落ちていく俺たち。飯村が危ないと思い、俺は飯村の体を抱えて、下敷きになって助けた。するとその場で、飯村は恥ずかしそうに頭を下げて、「助けてくれてありがとう。嬉しい」と言っていた。

 俺も照れながら返事を返す。初めて触れた女の子の体に思わず鼓動が高鳴っていた。


 意識をしてしまった俺だったが、誰にも言わずにおいた。だが、その日のうちに飯村が好きだと言う情報が何故か広まった。翌朝学校に言ってみると、俺のあだ名、「カナブン大好き!」と言う言葉が、教室の黒板全面にいっぱい書き込まれていた。


 そして教室には女子しかおらず、ニヤニヤとして、突然女子全員で俺に向かって叫んだ。


「カナブーン! 大好きだよ!」


 またもや、俺は硬直してしまい、動悸が高鳴った。だが、その次の言葉でまたもやどん底に落とされた。


「アハハハッハ! 可愛い! 固まってやんの。馬鹿だね、カナブン!」


 期待した俺が馬鹿だった。やはり馬鹿にされた。俺はその時思った。女に馬鹿にされて生きていくのが嫌になった。だから高校は男子校に進むことにした。

 でも、思春期の俺は、またもやどん底に落とされることになるとは、思っても見なかった。

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