第24話 銃弾
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奇妙な少年だった。
奴隷が手にしていた刀を拾い上げて武器にすればよいものを、なぜかそうしない。ようやく手に取った得物は、あろうことか刀の鞘のみ。
(日本刀を使えぬ理由でもあるのか)
万晴からは、凪が大阪の貧困街で育ったと聞いていた。
貧乏町人が刀の握り方を知らぬのは分かる。だが、だからと言って、目の前にある強力な武器には目もくれず、拳で戦うなどとは、いかに卑しい町民ですら考えつかない。
「うっ」
鞘と拳だけでは防ぎきれぬ刃が、凪の背中をかすめる。
流血してなお、凪の長身はよろめくどころか、闘志をみなぎらせていた。それが、小狂を少しずつ焦らせてゆく。
(
万晴に並び残虐、かつ戦いにも慣れた同胞を、駿河へ行かせてしまったことを小狂は後悔した。
「あれを出せ」
小狂は配下の浪人に命じる。浪人の手にある包みから取り出したのは、すでに装填の終わった鉄砲であった。
「小僧!」
小狂が喝声を上げた。
その声につられた凪の視線が一致する。
動きの鈍った凪の巨体めがけて、鉄砲の口が火を噴いた。
*
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