第35話 それはまるで全て筒抜けだったような

「これも食べて食べて」


母さんがいつにも増してグイグイくる。

皿に次々とおかずが盛られていく。

確かにお腹は空いていたけど、こんなに食べられないなぁ……。

お風呂で気を失ってたのがよほど心配だったらしい。

……まぁ、でも実際あのまま湯船の中にいたら危なかったので無理もない。

真由は何も言わない(というより、何か誤魔化しているような気もする)けど、きっと真由が見つけてくれたに違いない。

心の中で感謝しておく。


「真由、ありがとう」


「?、どういたしまして…?」


口に出ていたみたいだ。

スマホを見ていた真由が不思議そうに答える。


「……食事中にスマホはやめなさい」


「はーい」


うん、確かに行儀が悪いな。

父さんに叱られた真由は、シンプルな黒いカバーのスマホを渋々テーブルの端に置いて……

あれ?


「真由」


「何?おにいちゃん」


「そのスマホ……僕のじゃないか?」


「うん。そうだよ」


当たり前のように答える真由。


「なんで真由が持ってるの?」


「さっき落ちてたから」


地下室の時か……?


「まぁ、拾ってくれてありがと」


「うん。……あ、そうだ。LIMEきてたよ」


「あぁ、わかった」


千堂さんか神谷先輩かな?(完全なる二択)

急用だといけないので、今少しだけ確認しよう。


「真由、スマホとって」


「はい」


受け取ったスマホのホーム画面を見る……が、何の通知も来ていない。

ん?なんで?


「蓮也。スマホは……」


「はいはい、わかってる」


父さんに注意された。

不思議に思ったけれど、とりあえず今はご飯だ。





「ふぅ……ごちそうさま」


ひたすら皿に盛られたご飯と格闘すること1時間と少し。やっと完食できた。

そこらの運動部の合宿より食べたと思う。

……ごめんなさい、嘘です。

合宿とか行ったことない、そもそも部活に入ってないし。

所謂帰宅部というやつ。

なんか色々あって入る機会を逃したというか、誰からも誘われなかったというか……

結局、友達作りクラブは設立できなかったなぁ……。

……おっと、話が逸れた。


「さて、と……」


テーブルに置きっぱなしだったスマホを見る。

ホーム画面を見ても、やっぱり通知はきていない。

ロックを解除してLIMEを開く。

すると、そこには確かに新しいメッセージが届いていた。

思った通り、千堂さんと神谷先輩からだった。(だからその二択しかないんだってばよ)

あれ?

じゃあ、なんで通知が消えてたんだ?

僕は今見たばかりだ。確認する前に消えた……?

バグか何か?

……そういえば、真由はなぜスマホを見てたんだ?ロックされているスマホなんて何も見るものないんじゃ……

………


「……真由」


「何?」


「僕のスマホの、LIMEのトーク画面見た?」


「うん。見たよ」


「……ええと。僕、スマホのパスワード教えてたっけ?」


「あ」


‘あ’って何ぃぃーー⁉︎


「どうしてロックを解除できたんだ?」


「まあまあ、そんなことは気にしない方がいいよ」


「教えてないパスワードを知られてたって『そんなこと』で済ませていいの⁉︎」


かなり怖いよ。心霊とは別ベクトルの恐怖だよ。


「おにいちゃん、細かいことをあんまり気にするとハゲるよ」


ハゲるとか言わないでぇ!

離れたところで新聞を読んでる父さんが少しビクってなったよ!

やめたげてよぉ!

…あぁ、父さんを見ないでぇっ!


※※※


父さんが部屋に戻って行った(少し泣いてなかったかな?)後、真由とちゃんと話し合った。


「真由、なんで僕のスマホのパスワードを知ってたんだ?」


「それは……この前、たまたま見えたんだよ。ロック解除してるとこ」


「そうか……なら仕方ないか……」


たしかに。僕がロックを解除する所を、たまたま見てたんなら納得するしか……


「母さんが」


「母さーーーん!」


よろしい、家族会議だ。

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