第21話 チキンレース
帰宅後
「ただいま帰りました」
「おかえりなさいませ、お兄様」
「今日の晩ごはんは?」
「わたくしが腕によりをかけて作ったピッツァとカルボナーラとハンバーグですわ」
なんだか聞いたことのあるラインナップだった。
「僕は少し食べてきたから少なめでいいよ」
「……せっかく私が作ったご飯を残すの?」
「すべて残さずありがたくいただきます」
泣きそうな妹を見たらそうとしか言えないよね。
べ、別に全部食べなかったらどうなるのか怖かったわけじゃないんだからね!
夕食。
冷凍ピザと冷凍カルボナーラとハンバーグ。
真由が腕によりをかけて作ったらしい。
そうか……。
唯一ハンバーグだけが手作りだった。
チーズがかかったハンバーグ。
とても美味しかった。
真由もとても満足そう。
部屋に戻って(夕食は完食した)、スマホを見る。
LIMEの連絡先に新しく追加された2人の名前を見て、思わずにやけてしまう。
思えばここに誰かが追加されたのは、中学生になって初めてスマホを買ってもらった時以来だ(真由もその時一緒にスマホを買った。でも小4でスマホか……まぁ、コ◯ン君もスマホだしおかしくはないか)。
そうか……僕は3年越しにLIMEの‘友達を追加’をその言葉の通りに使うことができたのか……
中1の時の僕、やったぞ!
さて、この追加された2人と僕はグループなんてものを作ったらしい。
らしいというのは、実は僕はあまりLIMEの使い方が分かっていない。
今、そりゃそうだとか思ったやつ、ちょっと表出ろや。
LIME交換するぞ、こら。
話を戻そう。
グループは3人で会話するらしい。
普通のやつは1対1で会話する。
僕はこれしか知らなかった。
家族ではグループは作ってなかったので初グループだ。
グループには名前をつけるらしく、なぜか‘十宮’になった。
千堂さんと神谷先輩の推薦で決まったものだ。
なんだか十宮家のグループみたいだ。
それでこのグループなんだけど、まだ誰もメッセージを送っていない。
こういう時ってどうすればいいんだろう?
誰かが始めるのを待って……
というかなんの用もないのにメッセージを送っても大丈夫なのだろうか?
まぁ、2人がメッセージを送るのを待とう。
※※※
「あぁ〜!十宮くんと連絡先を交換してしまいました〜!」
嬉しさと恥ずかしさからついベッドの上を転がってしまう花音。
「わっ!」
勢い余ってベッドから落ちた。
落ちてもなお離さないスマホの画面にはLIMEが表示されている。
(えへへ……十宮…十宮……)
グループの名前が‘十宮’になったのは神谷と千堂の連携プレーの賜物である。
この時ばかりは2人の心が1つになった。
にやけながら画面を眺めること数十分。
「これって私から送ってもいいんでしょうか?」
LIMEは使っているが、好きな人とのLIMEなんて初めての花音は少し迷う。
なんの話題をふればいいかもまだ分からない。
それで結局、
「まぁ、誰かがメッセージを送ってからそれに返事をしましょう」
※※※
「十宮君と連絡先を交換することに成功したぞ!」
ぶっちゃけ那月は連絡手段などなくても今何をしているかなんかは大体分かったりするのだが……
(なぜかは聞かない方がいいだろう)
まぁ、それでも那月は好きな人と連絡先を正当な手段で手に入れることができたのが嬉しかったのだ。
「あぁ、グループ……十宮……」
なんだか自分も十宮家の一員になれたかのような錯覚がするLIMEのグループ名。
グループ名の話になった時、一瞬でこの案に辿り着き、同じような考えを持った花音と共に、蓮也をなんとか説得してつけた名前。
その時の会話
「あぁ、グループ名は何にしようか」
「グループ名?」
「そうだよ。ちなみにグループ名は基本的に人の名字なんかを使う事が多いんだ」
「そうですね。名字を使いますよね」
「へぇ、そうなんだ」
「この中の誰かの名字を使おうか」
「そうしましょう」
「じゃあ誰の……」
「多数決をとる!」
「十宮くんの名字がいい人!」
「「はい‼︎」」
「それじゃあグループ名は十宮に決定!」
「わーい!」
「……」
以上、グループ名に名字を使うのが一般的だと変な事を吹き込まれたLIME初心者(4年目のはず)の蓮也でした。
「それにしてもなんて送ればいいんだろうか?」
今何してる?とかでもいいのだが、別に大体分かることをわざわざ聞かなくてもいいだろう。
(だからなz…)
「まぁ、誰かがメッセージを送るのを待っていようか」
結局その日、LIMEで会話が交わされることはなかったという。
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