第17話 今日はお楽しみでしたか?

さっきまで1人じゃなかったから、1人での帰り道が少し寂しく感じる。

いつもこうだったはずなのに。

慣れていると思ったけど。

それでも、この寂しさも友達ができた証拠だと、大切に噛み締める。

1人で歩く帰り道。

でも、もう、1人じゃない。




「ただいまーー!」


つい、いつもよりも大きな声が出る。


「おかえりなさい、おにいちゃん♪」


満面の笑みの真由が出迎えてくれた。

満面の笑み。

……あれ?おかしいな。どうしてこうも寒気がするんだろう?

風邪でもひいたかな?

それとも、目の前の妹に恐怖しているとでもいうのだろうか。

満面の笑みの真由は続ける。


「今日はお楽しみでしたか?」(ニコリ)


どうやら後者のようだ。


「あ、あぁ、友達と、一緒に帰れて、楽しかったよ」


妹に気圧される兄、なんだか情けない。

まぁ、妹より友達の数が少ないという兄の時点で威厳もなにもない。


「ふ〜ん。楽しかったんだぁ?」


浮気を妻に咎められてる夫の気分だ。

なぜ?


「そ、そりゃ……」


語尾が小さくなっていく。

このまま、どういうわけか分からないけど責められると思ったら……


「良かったね!おにいちゃん!」


へ?


「やっと、おにいちゃんにも友達ができたんだね!」


真由は今度こそ、ちゃんと満面の笑みでそう言った。

……あぁ、そうか…


「あぁ、そうだなっ」


嬉しくなって真由を抱きしめてしまった。


「ほにゃっ!」


真由は驚いたけど、すぐに抱きしめ返して、


「本当に、良かったね」


と呟いた。

もうしばらくこうしていたかった。

こうして、2人で喜びを分かち合って……



「2人とも、玄関でなにやってるの?」


Oh……my mother

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る