復刊『Animec』感想 (1)

北川エイジ

第1話

予想外に濃厚な内容でした。

てっきり誌面の八割がガンダム特集で関係者の対談や取材記事だろう、あとは当時の裏話的な内容だろうなあと思っていたのですが、


どうもネットの反響を見るにそうではなさそうだと。

購入してざっと目を通すと力の入った本気の・・つまりアニメックイズムに満ちた雑誌となっていました。

恐れいります。

この時代にこうくるかと、こちらの想像を越えていました。


いまのところ特別寄稿として掲載されている宇野常寛氏のエッセイにもっとも心打たれました。

テレビで知ってる宇野くんの知られざる一面、しかも重要な一面が読み手にずしんと響く濃密さで記されてあり、ある種の運命的な感慨を受けている次第です。

彼を表舞台に導いたのはNHKだと思うのですが何ともすごい仕事をしたものです。背負うものが違う人物だったのですね。

彼もまたイズムを継承する人物だったとは・・

これまで宇野くんに対して個人的に〈タレント性があるのにもったいないなあ、文化人として誰かが育成すればもっと大きくなるだろうに〉などといち視聴者の上から目線で眺めていたものですが、

これからはリスペクトを込めた目線で見ることになりそうです。

このエッセイはアニメに興味がない層にとっても彼を知る上で意味のある内容なので一読の価値ありです。

他にも全体的にエネルギーみなぎる、背表紙にうたわれた“伝説の雑誌”の言葉にいつわりない濃厚な一冊となっています。

「日本のカルチャー」の視点から見ても出版界における意外なエポックとなるのではないでしょうか。

ムックとは実のところ80年代からのカルチャーシーンをアンダーグラウンドで支えてきた表現媒体です。

ここまでど真ん中を突っ切る例はめずらしく、かつ成功例としてもめずらしい。

それもこれもガンダムの力によって成し得たものなのでしょう。善き力、というものの体現を見せて貰いました。お見事です。


PS

―――さて、もうひとつ触れておかねばならない点があります。

『アニメ新世紀宣言』体験談コンテストのページです。巻末に小さな文字で載せられるのだろうと思っていました。まさか真ん中に、ああも大々的に掲載されるとは、これもまったく予想できませんでした。

驚きと嬉しさと申しわけなさが入り混じる心境です。

と同時に復刊の出来上がりを見ると“当時どうであったか”がテーマとなってもいて、イズムを知る人間のむき出しの感情そのままに書いたことが結果的に整合性をもたらしたのだと、そういまは受け止めています。





























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復刊『Animec』感想 (1) 北川エイジ @kitagawa333

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