第5話アメリア子爵令嬢視点

 リアムはもう駄目ね。

 本当に役立たずだったわ。

 なにも貢ぐ事なく潰れてしまったわ。

 廃嫡されるくらいなら、父親を殺して公爵家を奪い取ればいいのに。

 情けない男。


 でも完全に切るのは惜しいわ。

 公爵夫人の座は美味しいもの。

 証拠にならないように、暗号で書いた手紙で縁を繋ぎましょう。

 上手く操る事ができたら、父親を殺すかもしれません。

 ですがリアムだけに賭けるのは馬鹿げています。


 よく考えれば、公爵夫人など私には小さすぎるわ。

 私にはふさわしいのは王妃よ。

 私こそが、次の王妃にふさわしいのよ!

 そのためには、王子を誘惑しないといけないわね。

 今優勢なのはロバーツ殿下だけど……


 私の魅力なら、ロバーツ殿下も言いなりにできると思うけれど、時間はかかるわ。

 劣勢に立たされているとはいえ、イーサン殿下は第一王子。

 弱っている時ほど落としやすいわ。

 イーサン殿下なら、直ぐに私の魅力で言いなりにできる。

 劣勢も私の力で盛り返して見せます。


 昔の男に手紙を書きましょう。

「貴男のために、イーサン殿下に取り入りました」と。

「貴男を出世させるために、イーサン殿下の妃になります」と。

「いつか、必ず、逢瀬の刻を創り出します」と。

 そうすれば奮起するでしょう。


 父親や兄を追い落として、家の実権を握る者も出てくるでしょう。

 そうすれば、イーサン殿下も私の言いなりです。

 私は、私の美を敬う者に囲まれて暮らす事ができます。

 欲しい物が全て手に入ります。

 少々の危険など、気にする必要もありません。


 いえ、私に危険が及ぶことなどありません。

 今回の決闘でも、私が罪に問われることはありませんでした。

 全てはリアムが決めてやった事。

 リアムが勝手に私に恋をして、ノヴァとの婚約を破棄したのです。

 ノヴァのようなブスは婚約破棄されて当然なのです。


 イーサン殿下の能力が低くて、思うようにいかなかったら、ロバーツ殿下を誘惑すればいいだけの事。

 時間がかかるようなら、国王陛下を誘惑すればすむ事。

 その方が簡単かしら?

 国王陛下を誘惑して、正妃の地位を得る方が私の美にふさわしいかしら?


 でも、それは後の愉しみにして、恥をかかされた報復をしないと。

 このままでは、私の気持ちが晴ません。

 ノヴァに恥をかかさないと気が収まりません。

 決闘で活躍したレイズとアシェル。

 二人とも誘惑してしまおうかしら?


 武張っている方ほど色香には弱いもの。

 レイズを誘惑して、ノヴァが家にいられなくするのも面白いわね。

 アシェルをイーサン殿下の派閥に引き込めたら、私の功績も大きくなるわね。

 でもまずはイーサン殿下からね。


 

 

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