第4話ノヴァ伯爵令嬢視点
「兄上様。
本当に大丈夫なのでしょうか?
内乱が始まったりしないでしょうか?」
心配です。
兄上様に危険が及んでしまうかもしれません。
私の為に決闘をされるのを見た時、心臓が張り裂けそうでした。
もう二度とあのような思いはしたくないのです。
兄上様に危険な真似をして頂きたくないのです。
「大丈夫だよ。
代闘人を立てた事で、グラント公爵家の名声は地に落ちた。
グラント公爵家に味方した事で、イーサン殿下も信望を失われた。
何も心配いらないよ。
それよりも、ノヴァは大丈夫かい?」
うれしい。
こんなにうれしい事はありません!
兄上様が私の事を気遣ってくれています。
でも、御心配をおかけするわけにはいきません。
「私は大丈夫でございます。
元々リアム様の事は好きではありませんでした。
家のため国のため、毒を飲む覚悟でお受けした婚約です。
むしろ破棄できて清々しております」
本当の事を申しました。
今までは我慢していましたが、もう打ち明けても大丈夫です。
私は一度婚約破棄された傷物です。
兄上様のお陰で、莫大な身代金の半分が私の個人財産になりました。
婚約破棄の賠償で頂いた領地もあります。
一生独り身でも、兄上様の側にいる事ができます。
「そうか。
嫌な婚約を押し付けてすまなかったな」
あ。
いけません。
兄上様に詫びの言葉を口にさせるなんて!
そんなつもりで言ったのではないのです。
私は、婚約が破棄できたことを喜んでいると、お伝えしたかっただけなのです。
「違うのです、兄上様。
貴族の娘が、好きな殿方と添えないのは当たり前の事でございます。
政略結婚で家の役に立てるのが、名誉な事なのは分かっているのです。
ただ今回は破棄できたので、それが嬉しかったとお伝えしたかっただけなのです。
兄上様に詫びて頂きたいわけではないのです。
兄上様が私のために戦って下さったことが、嬉しいと同時に心配で仕方がなく、もう二度と私のためにあのような危険な事はして頂きたくないと思ったのです」
支離滅裂になってしまいました。
意味のない言葉を連ねてしまったかもしれません。
私が兄上様の事を想っていたこと、心配だったと言う事を、分かって頂きたかったのです。
「ありがとう。
ノヴァが家の事を考え、俺の事も大切に思ってくれているのがよくわかったよ。
俺も家のことも考えつつ、ノヴァの事を大切にするよ。
だから今度は正直に話してくれ。
家のためにもなる、ノヴァの嫌でない相手を探すよ」
もう!
兄上様はなにも分かってくれていません!
私は一生兄上様の側にいたいのです。
それだけでいいのです。
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