ルヌーラ
狸汁ぺろり
爪半月
外見で人に褒められることは滅多にないが、初対面の相手(特に女性の方)が私に対してどうにかお世辞を言おうとした場合、爪を褒められることが多い。健康的で色艶が良く、形も整っていて羨ましいのだそうだ。そう言われればこちらも満更ではないが、私は爪の手入れなどしたことがない。
幼少期から、毛布の端を爪でいじくるのが好きだった。それだけならばごくありふれたブランケット症候群と言えるだろうが、私の場合、ブランケットというよりも、爪をこする事の方が重要であった。特に、爪の付け根の白い部分で、柔らかい生地をこすると無性に心地が良いのだ。外出時には服の袖や襟でこする。この癖は物心ついてから現在に至るまでずっと続いている。きっと三つ子の魂百まで行くのだろう。
この付け根の白い部分を、爪半月、あるいはルヌーラと呼ぶのだと、ある女性から聞いた。
そうすると私は生まれてこの方ずっと、ルヌーラをこすり、ルヌーラを押さえ、ルヌーラを刺激し続けてきたことになる。ひょっとすると、このルヌーラをこすり刺激する行為によって、精神の安定とともに、マッサージのような美容効果を獲得していたのではなかろうか。
今後、「どうしてそんなに爪がお綺麗なんですか?」とひとに聞かれたら、「ルヌーラをマッサージしているんです」と答えることにしよう。根拠はないけれど勝手に言おう。そう決めた。
ところでこのルヌーラ、自分でこするのも良いものだが、人に押さえてもらったりすると、これもなかなかクるものがある。
これは私一人の変わった性癖なのか?
それとも大なり小なり、誰にでもある神経の反応なのだろうか?
是非多くの人に尋ねたい疑問だが、さすがにそれを目の前の女性に尋ねることは憚られた。この駄文を綴りながら、今日も私はルヌーラをこすっている。良い。
ルヌーラ 狸汁ぺろり @tanukijiru
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