狸汁ぺろり

私は語ります。人によってはひょっとすると笑い飛ばされるかもしれない下らぬ話ではありますが、どうしても心に食い込んで拭い難い不安、あさましい打ち明け話なのです……。

とある『稼業』を受け継ぐ一族の物語。 自称物書きの父・ロッチェ。 純朴スポーツマンの兄・コロッチェ。 才気煥発で気の強い妹・コロロッチェ。 母・静代。 彼ら血族は誰も風変わりで、…

狸の棲む床々山と、人間の町『大年』の間で、近く大きな戦が起ころうとしていた。 血気盛んな男狸の大伝は、援軍として現れた女狸の灯子に強い感情と対抗心を抱く。一方、人間の狩人である丈…

那々はお友達のすいちゃん家の裏山に登った。 山の入り口には神様の住む『ほこら』があったけれど、すいちゃんはそれを『ほら』と呼んだ。

クリスマスの夜。サンタクロースはその年の最後の家を訪れた。そこはクリスマスの幸福な気配がない、しんと静まる暗い家だった。やがて、怪異が、サンタを襲う。

「このバルーンが破れた時、私は辞任する」 独裁的大統領の宣言は、人々の希望となった。

剣術道場に通う紙助は、師範の子である岩太郎から陰湿ないじめを受けていた。己の弱さ、情けなさに悲嘆する紙助は、自分自身で己を鍛えるため、山に籠ることを決意する。しかし、山のふもとで…

日常で見つけたモノの話。第二弾は爪の話。

蒸し暑い夜。僕は唐突に自分の正体を知った。僕はボールを食べる妖怪だった。 「たま」に魅せられた奇人たちの物語は、やがて血みどろの生存闘争へと発展していく。

日常で見つけたモノの話。第一弾は公衆便所にて。

背中好きの少女は暗殺を生業としていた。 ある標的の背中を気に入った少女は、その男を付け回す。

母親のいない「僕」は、周囲から少しだけ特別な目で見られている。 友達からいじめられていないか。家で寂しい思いをしていないか。勉強は疎かになっていないか。 その優しい目は時に、僕の…

尾待山の四郎桜は、春になっても花のない『咲かず桜』。 山で暮らす少女・おずくは、父の勧めで山を離れ、町の商家へ養子に行くことになる。 やがて大人になったおずくは、夫の何気ない一言…

たった一度の恥で疎遠になってしまった、「俺」と銀次郎。 銀次郎が祝言を上げたと聞いた俺は、夫婦になったばかりの銀次郎の家に忍び込み、その睦言を盗み聞く。

夢の中に他者が現れる『夢枕』現象。 一代で企業を発展させた須藤稲吉は、老境に入り、にわかに夢枕への関心を抱くようになった。 稲吉の孫の正夫は、仕事一徹だった祖父の変化に気が付きな…

野良猫に餌を与えてはいけない。 夕暮れの公園で少年が聞かされたのは、餌付けに狂った男の顛末だった。

雷神の子である稲緒は、美しい村娘ふさに心惹かれ、雲から地上へと転落してしまう。 落ちた拍子に村の神木を傷つけ人々の怒りを買った稲緒は、彼らの信仰心を逆手に取り、己は天の御使いであ…

ある地震の夜。神は天井裏から、人間の情事を覗き見ていた。 ところが人間は神の存在を忘れ、従来の関係から離れつつあった。家を建て替え、神の住めぬ家にしようと。それがどれだけ愚かな選…