第23話 炎の竜

「―――さて、このまま外に出る訳には行かねぇよなぁ。」


オレは周りを見渡した。

そこにあったのは、オレの熱波で焼け転がってる奴らの死体があった。


「せめてこいつらでも食って、色々蓄えておくとするか。」


オレは一心不乱に死体を食った。


「―――やっぱクソまずいな、これ。」


正直に言って、こいつらや人間の肉と残飯を比べて、どっちの方がましかと答えられたら、真っ先にオレは残飯の方を答えるだろうな。


理由は簡単だ、シンプルに不味い!

味がしない、歯応えない、ボリュームがないと、人間と奴らの肉はないない尽くしだ!


まぁ、その代わりに天然のマナや知識などが入ってくるから、単純に手段としての捕食も無きにしも非ずだな。


まぁ、それでもビーフジャーキーには永遠に及ばんけどな。

それはさておき、結論から先に言うと、収穫ありだ。


おかげさまで日本語を喋れるようになったし、理解も出来る。

妖精ってのは本当に便利な種族だよな。


「後は着替えだな…」


なんか適当な服でも探すことにした。

今の格好は上半身裸の短パンだしな。


とは言っても、着れそうな物はほとんど焼けてしまったし、ろくな物も残ってない。

となれば、行動は一つ。


「誰かに合わないようにするしかないな…」


そう言って、オレは部屋を後にした。(ちなみにあの部屋にもう用はないので、後で木端微塵に爆破した。)


爆音が遠ざかっていくのを実感しつつ、オレは看板に向かった。


「―――お、来たぜ爺さん。」

「―――ようやくですか…ふぉっふぉっふぉ。待ちくたびれたものですじゃ。」


看板に立つと、そこにはガキ二人とジジイがいた。


「よぉ、待ってたぜ。早く来いよ。」


オレの前に金髪に赤メッシュのガキが手招きをしてきた。


「―――会って間もない奴にその態度か、随分舐め腐ってんなぁガキが。」

「んだとてめぇ!今のてめぇが俺に勝てると思ってんのか!?」

「おいおい、何も戦うとは一言も言ってないぞぉ。喧嘩っ早いのはいいことだが、ここではどうしたいんだぁ?」


「・・・・・・ついてこい。」


急に喧嘩を吹っかけておいて、軽く注意したらしおらしくなった。

まだまだケツの青い小僧だな。


じじいの目の前に向かって、オレはガキと一緒に歩いていった。


「おお、お待ちしておりましたですじゃ。儂はラーズと申すものですじゃ。」

「ラーズ、それがあんたの名前か。」

「さようでございます。こちらの手前におりますのは、儂の自慢の孫娘ですじゃ。右手の金髪の方が、井之川瀬奈いのかわせなでございます。」

「・・・井之川瀬奈だ、よろしく。」


さっきのガキが井之川瀬奈か。

どうも喧嘩っ早いが、意外と素直なところが見える。


「そして左手の方にいますのが、幹谷絵里もとやえりですじゃ。」

「幹谷絵里と言います。姉さんが色々迷惑を掛けてすみませんでした。」

「姉さんってことは、二人は双子か何かなのか?」

「流石の慧眼、恐れ入りますですじゃ。いかにも、絵里と瀬奈は双子の姉妹。れっきとした戸籍付きですじゃ。」


そういうと、じじいはオレに戸籍を渡してきた。


・・・確かに、戸籍に間違いはない。

ただ、少し気になる点を見つけた。


「二人の両親の名字が、【八十神】ってのはどういうことなんだ?」

「いやはや、そこにも気付きますか。八十神というのはこの二人の本家で、要は養子でございます。」

「養子…その八十神って家はどんな家なんだ?」

「一言で言えば、表舞台に立つことはめったにない家ですじゃ。その代わりに多くの分家が存在します。」

「多くの分家?」

「はい。雛沢、幹谷、井之川、稲志田、そして壱原。これらは全て、八十神家から派生した分家でございます。」

「・・・あんたは何なんだ、じじい。何故そこまで詳しく知っている。」

「儂は何を隠そう、八十神家から送られた指導者でございます。現当主である磊徒ライト様―――もとい舞彩弥マイヤ様から、各分家の指導・監視を任されておりまする。」

「そんなあんたが、なんでわざわざオレのような奴を待っていたんだ。」

「貴方を待っているよう、エコロ坊ちゃんに言われましたので。」

「エコロ・・・?」

「この日本の警視総監を努めていらっしゃいます、雛沢穢虚盧様でございます。」

「警視総監が、わざわざあんたにそう言ったのか?」

「確かにエコロ坊ちゃんはそう申されましたが、直接的に迎えに行くよう儂に言い伝えたのは、他の誰でもないベルゼブブ様でございます。」

「―――――!?」


ベルゼブブが…直接迎えに行くように…だと!?

いくらゴッドハンドで未来が観えるといっても、奴の能力はせいぜい5時間程度しか働かないはずだ―――!!


「ベルゼブブ様が儂らに、『ARKに拙の客人を載せてある。汝らに回収を頼みたい』と言われましてな。いやはや、木星や海王星に回収されるとまずかったのですが、無事に海王星は【宇宙意思】に接続したようですな。」

「宇宙意思…?」

「いわば、貴方達サタンを生み出した救世主メシアの影―――即ち、この宇宙の集合的無意識です。」

「宇宙の、集合的無意識・・・」

「集合的無意識とは即ち、己が内に秘めた心内宇宙。仏教の悟りの極地とも言えるでしょう。阿頼耶識とも言いますな。」

「んなことよりもじじい、俺はこいつと戦いてぇ!一発殴らないと気が済まないからな!」

「ちょっと姉さん、いきなり失礼ですよ。ええっと、貴方は……」

「―――ドレイクでいい。名前は呼ばれたくないし、呼びたくもない。」

「すみませんドレイクさん、姉さんったらいつも喧嘩っ早くて。」

「絵里、俺とこいつの問題だ!お前が入ってくるんじゃねえ!」


瀬奈が絵里に対し怒鳴り散らしたその瞬間の出来事だった。


「―――良いではないか、双子のコンビネーションとやらを吾は久々に見たくなってな。それとドレイクとやらの実力を見ておきたいしな。」


そこに当たり前のように存在していたが、さっきまでその姿はなかった。

そんな人影が、いつしかラーズの傍に立っていた。


「な―――――」

「貴方は――――――」

「おや、いつの間に憑りついていらしたのですか?―――マイヤ様?」

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