日が登る。すべて落ちる。
コンビニで、お茶やお弁当といったモノを買い込む。昼はできれば傍にいたいし、誰かに頼むのも気が引けるし。夜更かし用の強壮ドリンクも忘れずに。
もっと安全なところとか、考えないとな。案外外とかは安全だったりしないだろうか?
それに、きっとそういうのに詳しい先生も力になってくれるだろう。
月が優しく照らす。夜風は、使いすぎてほだった脳みそを冷却するのに最適だった。友香子が戻ってきた後のことまで考えるようになるほどには。心地よい夜風は、現実性も危機感も冷やしてしまっていた。
二人でご飯を食べて、荒れ果てた職員室を片付けているだけで、朝はあっという間にやって来てしまった。早めに来る先生が到着するとほぼ同時刻に、化け物が校内をうろつき始めたと友香子が言う。
「手伝ってくれてありがとうね、ゆかちゃん。」
使えなくなった書類を印刷し直したものを数えつつ、電話越しに友香子に声をかける。もう友香子は既にトイレの個室に隠れた後だ。もう安全だ。
「だって、暇でしたからね」
すっかりいつもの調子を取り戻した友香子の声に、また安心をもらう。微妙にデレない愛しい声。……最悪、このままでもいいかな、なんて考えがよぎってしまった。ダメだ。私がよくても、ぜったいダメだ。そんなこと、考えるだけでダメだ。
ため息をついて、脳みそをリセットした。
「じゃあ、そろそろホームルームだから、切るね」
そこから何分話しただろうか、生徒が本格的に登校しだす時間になる。
「……ねえ、静先生。なんか、すごくいっぱい、学校に攻めて来てる……」
「隠れてたんじゃなかったの?」
「ちょっと、図書室に行ってたの。そしたら、窓から、道を埋め尽くすほどの化け物が……」
図書室と言えば、東館の三階の奥だ。丁度、登下校が一望できる。もしかして……
「と、とりあえず、最寄りのトイレに隠れて。そしたら、立ち入り禁止にするから。もしかしたらだけど、こっち側の人間の位置と一緒の可能性がある。」
早口でそう告げて、通話を切ろうとする。すごく不安そうに、やっぱりそうなのかなぁ……と呟いてから通話が切れた。
弱気で、ハムスターのような小ささを感じさせる、普段とは似つかない友香子の声。……なんだか、なんだかとてもドキドキした。ほぼ劣情だ。
とにかく動くことで、なんとかそのダメな精神を振り払おうとした。
倉庫から引っ張り出した三角コーンに立ち入り禁止と張り付けたものを担いで、トイレに向かう。そして、出会った。
「……え?う、嘘、でしょ……?」
気がついたらからか?友香子に少しでも不純な気持ちを抱いたからか?何がトリガーになった?
そこには、全身をすべての絵の具を混ぜたような気色の悪い黒で塗りたくって足を後付けしただけのような見た目をしたでかい化け物がいた。左上に開いた口から、盛んに何かを呟いている。ヤバい。
「こ、これが、友香子が巻き込まれた、」
『ギイイイイイイィィィイイイイィアアアアァァ』
「現象……!?」
耳を割くような奇声を張り上げて、突然胴体に開いた目でこちらを認めた。
「ヒッ!」
あ、
私は丁度階段を上がっていた。
トイレは階段のすぐ側の、上がった踊り場の地点にある。そして、職員室は東館の一階のはじっこにあるからだ。
それはつまり、
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