第7話 気分はラスボス前




 なっ、なんでここに磐上さんが居る!?――――――




 ――――――やっ、やばいっ! どうして晴下君が保健室に?




 って、まずい。思わず驚いたっての顔全面に出しちまってる! 冷静になれ、ここは冷静に話し掛けろ?――――――


「あれ? 磐上さん?」


 よし、素晴らしいぞ晴下黎――――――




 ――――――はっ! 晴下君から話し掛けてくれた? ちょっと嬉しい……って余韻はあとあと。折角の晴下君からくれたキャッチボール……終わらせるわけにはいかないっ!


『あっ、晴下君。どうしたの? 怪我?』


 ――――――良いよ、彩音。こういうシチュエーションで1番怖いのは無言の間っ! それだけは回避しないと。




 とりあえず、焦ってキャラ崩壊って危機は脱したかな? とりあえず磐上さんの問い掛けに答えとこ――――――


「怪我っていうか、ちょっとテーピングテープ貰いに来たんだけど……不思木先生は不在?」




 ――――――やっ、やったぁ。晴下君と挨拶以外の会話出来たよっ! 目標達成だよっ! でも……こんな1対1で話せる機会なんて早々ないよ? これはチャンス、出来るだけ……アナタの事もっと知りたい。その為に……


『ちょっと職員室に呼ばれたみたい。でもすぐに戻るって言ってたよ? だから……』


 ――――――女、磐上彩音。勝負致しますっ!


『立ちっぱなしは疲れるだろうし、ねっ? 座って待ってよっ?』




 な……んだと? 椅子を引いて誘ってくれた? なんだこの感じ、すごく良い気分なんだけど? 少し優しくされたからなのか? ってその顔はヤバいっ! その優しさにその笑顔は反則だっ!――――――


 くっ……焦るな黎、自我を保て黎。ふぅ。これは磐上さんの普通なんだ。コミュ力お化けという異名たる所以。良いか? あくまで冷静に――――――


「そっか、じゃあお言葉に甘えて……よいしょっと」


 仮面を被り続けるんだ! って……結構近っ!――――――




 ――――――きっ、来たぁ。てか思いの他ちかっ! とっさに近くの椅子引いちゃったけど、普通自分の対面にある椅子勧めるよね? ミスったかなって思ったけど、何事もなく座ってくれたって事は……そんなの関係ねぇって事……だよね? うん。この距離感……最高。


 ――――――って、まだまだ満足しちゃダメだってば。ここからが本番だよ? 彩音。




 くっ、思い切って座ったものの……なんだこの距離感。教室とは違って顔もバッチリ見えるし……ゴクリ。しっかししろ黎。てか、本番はここからだぞ?――――――




 今からアリス先生が来るまでの時間――――――


 ――――――ここからアリス先生が戻ってくるまで。



 この間こそが――――――

 ――――――その時間こそ




 ――――――勝負だっ!――――――



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