第4話 私の戦いはこれからだぁ!
「――――――となって」
うぅ……
「――――――であるから」
ううぅ……
「――――――となります」
うぅ……やっぱまだ慣れないっ!
ダメだぁ。授業に集中しようとしても後ろに晴下君が居るってだけで胸がドキドキしてる。
晴下君は黒板見てるはずなのに、視界に自分の背中があると思っただけで背中がちょっと暖かいんですけど?
これはヤバい……
私は一体、
何時になったらこの状況に慣れるんでしょうかぁぁ。
キーンコーンカ-ンコ-ン
あぁ、やっと終わった。やっと昼休みだよぉ。視線感じるだけでこんなになるなんて、恐るべし晴下黎。
って、私が勝手に感じてる事なんだけどね? でも、この胸がキュってする感じ……嫌いじゃない。
……キャー、滅茶苦茶恋してるじゃん私。ヤバいじゃん私。だって仕方ないよね? あんな姿見せられたら一発で落とされ……ってダメダメ、こんな惚気てる場合じゃない。折角お近付きになれたんだから、バレない様に逐一観察してリサーチして、外堀からじっくり埋めないと!
よし、じゃあとりあえず。晴下黎、お昼はお弁当派なのか学食派なのか? ってとこを調べようかな。私ずっとお弁当で、ずっと教室で食べてたから……その辺の事よく分かってないんだよね。
はぁ……親しくなれた暁には学食派だったら、
≪晴下君、今日から期間限定のメニューが登場するんだって≫
≪そうなのか?≫
≪うん。だからね? 一緒に……あれ?≫
≪何してんだ。早く行くぞ?≫
かっ、格好良い。それにお弁当派だったら……
≪晴下君お弁当一緒にどうかな?≫
≪あぁ。いいよ≫
≪ありがとう。よいしょ≫
≪……あれ、どうしたの? 卵焼き?≫
≪いっ、いや。なんでもない≫
≪ふふふっ、もし良かったらどーぞ≫
≪いっ、良いのか?≫
≪もちろん。ちょっと多く作っちゃったから。はいっ≫
≪サンキュ。……ウマッ≫
キャー! 最高! マジで最高! 想像するだけで悶絶なんですけど!?
……はっ! ダメダメ妄想だけならいつだって出来るんだよ? でも今はそれを実現できる舞台が整ってる。だったら貪欲に突き進むべしっ! となれば、まずは晴下君のお昼事情を……
「あやねん、お昼食べよ?」
そんな決意を吹き飛ばす聞き覚えのある声。そしてその方向へ視線を移すと、その先に居たのはショートカットでお目目パッチリ、笑うと姿を見せる可愛い八重歯。そんな顔で私を見下ろすつきのんだった。
はっ! つっ
このド天然KY女ぁぁ!
いい? 私は今物凄い人生の転機を素晴らしい決意と共に歩もうとしてたんだよ? それをものの見事にジャストタイミングで登場して……ちょっと不機嫌な顔しようか?
「ここで良いかな? 磐上さん?」
って、えぇっと確か
「もちろん。皆で食べよう?」
さてさて、ここで良いのかな? よいしょっと。あれ? 晴下君、未だに席を立たず? もしかして弁当派なのかな?
ザワザワ
ガタガタ
ちょっと。そこの、えぇっと……
……待って? 昔から城を攻略するにはまず外堀からって言葉があるよね。彼と話が出来る様になれば、晴下君の込み入った情報も聞き出せるのでは?
これだっ! となれば適切な距離感は保ちつつ、晴下君にも丹波君にも悟られない様に自然に……って!
難攻不落であろう晴下城。そこを落城させる為の作戦を、頭の中でせっせと考えている時だった。その如何わしい気配に気付いたのか、一瞬晴下君の視線がこちらに向けられる。
あぶなっ。バレた? 気付かれた? でもそんな慌てたそぶりは見せてないから大丈夫だよね?
私は瞬時に目線を逸らしてみたものの、そこで待ち受けていたものは想像を絶する光景だった。
なん……だと……
チラチラ晴下君ばかり見た居た私。そしてそこから目を離して、やっと自分の置かれている状況が分かった私。そう、
なぜ私の周りにこんなにも女子が!?
いやいや、確かにお昼食べるって言ったよ。ねぇつきのん? 一緒に食べようって言ったよ。ねぇ藤森さん? 鉢巻さん? でもさ? なんかおかしくない? さっきからちょっとザワザワしてたし、机動かす音はしてたけど、机くっつけすぎて長テーブルみたいになってるじゃん? 1人、2人、3人…………あぁ、数えるのはやめとこう。
はぁ……後方に教壇。横と目の前にキラキラした女子高生。囲まれた? 包囲網だよね? まるでウォール○○○みたいなんだけど? 今ならあの漫画の主人公達の気持ちが分かる気がする。
「あっ、さなちゃんのお弁当可愛いー」
「ねねちゃんだってー」
そして急に始まったよ? 昼食という名の女子会が。
「そういえば黎。あの磐上彩音と同じクラスみたいじゃん」
っ! これはどういう事なんでしょう。周りの女子達は盛り上がってますよ? それはもう。でもね、なんでかな? 自分の名前が出てきた瞬間、それだけはハッキリ耳に入っちゃうんだよね? それは勿論私も例外じゃない。確かに聞こえました。男の声で磐上彩音って名前をね?
そして教室の中に居る男子は2人しか居ない。そしてハッキリと聞こえた黎という名前。という事は、
丹波君が私の話題を晴下君に!?
えっ、どゆ事? 名前言うって事は私の事なんか話してるの? 滅茶苦茶気になるんですけど? 晴下君が絡んでるなら尚更っ!
「あやねん、お弁当開けないの?」
「あっ、ごめんごめん」
ちょっとつきのん、ごめん。
「わぁ、磐上さんのお弁当彩りが凄いー」
「ホントだー」
「そっ、そう? ありがとう。」
鉢巻さんもごめん。私……
他の会話に集中しますっ!
「まぁお前でも興味が湧くのは分かる分かる。ちょっと身長も大きいし」
晴下君の声じゃない。という事は丹波君が話してる? ちょっと待ってそうなると、お前って言うのが晴下君の事なんだよね? 興味が湧く? 嘘、晴下君が私に興味を? でも身長の話してる。やっぱり男の人は小さい子の方が……
ウンウン
はっ! 頷いてる? これって肯定だよね? だよね?
「テニス部のエースなだけあって足も細いし」
ウンウン
はぁ……足も認められたぁ。
「そしてあの巨乳」
ウンウン
良かったぁ。自分で言うのもあれだけど胸はちょっと自信あるよ?
「からの、あのウエストの細さ」
ウンウン
うっ、最近食べ過ぎてるかも……引き締めないとっ!
「さらにあのお尻ときたら、最高過ぎるよなぁ」
ピタッ
えっ……待って? お尻の事になったら頷いてくれないんですけど? それって晴下君にとってはタイプじゃないって事なの?
あっ! そう言えば昨日も……晴下君私のお尻見て溜息ついてなかった?
……うぅ。分かってるんだよ? 自分でも分かってるんだよ? でもさ? 仕方ないじゃん? テニスってお尻の筋肉結構使うの。だからスクワットとか……だからおっきくなっちゃったんだよぉ。
でもさ、やっぱり男の人はちっちゃいお尻の子の方が好きなんだよね? はぁ……
「彩音さん、おかずあげるよー」
「あっ、磐上さん。あたしのもどうぞ?」
「良かったらこれも……」
あぁ、どうしたの皆? 傷心の私を慰めてくれてるの?
ん? ハンバーグにシュウマイに唐揚げって、みんなおかずの中のメインディッシュじゃない? 良いの? 良いの? うぅ……皆ありがとう。でもさ、それは気持ちだけで十分だよ?
「ありがとう。じゃあ皆でおかずの取り替えっこしましょ?」
どうせなら皆で楽しまないとね?
「本当? じゃあこの卵焼きを……」
「私は……」
はぁ、やっぱりこういう時に持つべきはお友達よねぇ。
あっ、そんな事しみじみ感じてる間に、晴下君達教室から出て行っちゃった……と言う事はやっぱりお昼は学食かぁ。メモメモっと。なるほど、こりゃ仲良くなったら手作りのお弁当でハートと胃袋両方ゲット……なんて事できる可能性もあるよね?
「あやねんの唐揚げもーらい」
って、ちょっと? それは私が交換した唐揚げなんですけど? 全く、本当につきのんは良く食べるなぁ。
……ん? そうだ。そうだよ。こんな状況になって気付いたんだけどさ? つきのん、結構というよりかなりご飯とかお菓子とか食べてるよね? そんでほとんど同じ練習メニューこなしてるよね? なのに、なんで私より……
お尻ちっちゃいのよ!
これはなんかやってるね? 絶対なんかやってるね? よぉし、つきのん? 今日から君もリサーチ対象者だっ! そのカラクリ絶対掴むよ? そしてそして……
必ず、キュッとした桃の様なお尻を……手に入れてみせるっ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます