第3話 敵か味方か丹波嵐
キーンコーンカ-ンコ-ン
やっとこさ、チャイムが鳴るなり、昼休み。
そんな俳句を詠みたくなるくらい、なんだか午前の授業はとんでもなく長く感じた。春休みの後遺症か? それとも、目の前で相変わらず良い匂い漂わせてる彼女のせいか? ……分からんな。
「あやねん、お昼食べよ?」
「ここで良いかな? 磐上さん?」
「もちろん。皆で食べよう?」
まぁそんな磐上さんもお昼は友達と食べるらしく、早々に席から離れて行った。
そしてあっと言う間に囲まれる辺りが彼女の人気を物語っている。てか、まだ新学期始まって2日目だよね? まるで防護壁なんですけど。これ程までに女子人気も高いのか……恐るべし。
あんな近距離で女子達に囲まれる磐上さん、ちょっと羨ましいなぁ。なんて、無い物ねだりしてもしょうがないし、さっさと学食行こうっと。
「よーう、黎っ!」
立ち上がろうと机に手を掛けた瞬間に、耳を突き抜ける声。若干ハイテンション気味なその声を……俺は知っている。
おいおい、何もこのタイミングで来る事はないだろ? お前この状況分かってる? 見渡してみろ、非リア充男子は空腹に耐えかねて我先にと学食へ、リア充男子は彼女と手繋いでどっかに。つまりこの教室は秘密の花園状態で、場違い野郎は俺達だけなんだよっ!
「なんだよ、
この空気を読まず、話し掛けて来たツンツンヘアーの名前は
「なんだとは失礼だぞ? 折角昼飯誘いに来たって言うのにっ!」
天然でテンション高くてKY……一見組み合わさるとヤバいであろう特徴を持ち合わせてはいるけど、こいつの場合はどこか無邪気で憎めない。実際童顔だしな。だからこそ、男女問わず仲良くできるし、男女問わず友達も多いんだろう。実際明るい性格なのは間違いない……
「そういえば黎。あの磐上彩音と同じクラスみたいじゃん」
前言撤回!
おい、その磐上彩音はその教卓の前に出来上がってる防護壁の真ん中で超絶守られてんだよ。本人に聞こえたらこっち見んだろ? 俺を陥れる為の敵か貴様は! ……大丈夫か? チラッ。
すぐさま視線を向け防護壁の様子を探っていると、どうやら物凄いガールズトークで盛り上がっているみたいだ。というよりちょっとしたパーティー並みの会話量なんですけど?
「どしたどした? いきなりキョロキョロして。あっ、さてはお前興味深々なんだろー?」
「はっ、はぁ?」
はぃ? 何言ってんだよお前。
「まぁお前でも興味湧くのは分かる分かる。ちょっと身長も大きいし」
確かにいざ目の前にしたら女子にしては高めで、
「テニス部のエースなだけあって足も細いし」
足は細いながらも健康的。
「そしてあの巨乳」
制服の上からもそれが分かるって、相当ヤバいぞ?
「からの、あのウエストの細さ」
まさしくボン・キュッって言葉の体現だよなぁ。
「さらにあのお尻と来たら、最高過ぎるよなぁ」
ん? お尻? そこについては同感できないね。やっぱり土手が……って、馬鹿野郎! 本人居るって言ってんだろ? ホントお前わざとか? それとも天然か? むしろ無自覚の悪意ってやつの方がよっぽどタチ悪いんですけど? ……だっ、大丈夫か? チラッ。
「彩音さん、おかずあげるよー」
「あっ、磐上さん。あたしのもどうぞ?」
「良かったらこれも……」
「ありがとう。じゃあ皆でおかずの取り替えっこしましょ?」
なんだこの盛り上がりは。しかもおかずの取り替えっことか……なんか良いなぁ。でもこれって女子同士だから成り立つ事であって、野郎同士でやってたら……
≪黎ー、この卵焼きとお前のハンバーグ取り替えっこしようぜ≫
≪はぁ? それじゃあまりにも不釣り合いだ。出直してこいっ!≫
絶体こうなるよな? それに例え取り換えっこ出来たとしても……
≪じゃあブロッコリーとならどうだ? 頼むよぉ≫
≪まぁ、仕方ねぇなぁー。今日だけだぞ?≫
≪≪はははっ≫≫
……うおっ。めっちゃ気持ち悪りぃ。さっさと食堂行こう。
「はぁ」
「なぁに人の顔見て溜息ついてんだよ!」
「いや、なんでもない。早く食堂行こうぜ?」
「うわっ、明らかに何か言いたそうなんですけど? さっきまで俺言う事にうんうん頷いてたじゃねぇか」
あぁ、そうだな。お尻の事以外はな? それに別にお前は悪くないさ、ただ……
俺の妄想力が高すぎるだけなんだ。
「まぁまぁ。ほれ行くぞ?」
「おいー! なに悟り開いた様な顔してんんだ待てー!」
はぁ……俺も女子とおかずの取り替えっこしてぇなぁ。
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