第9話 高男子力男子とトラブル

 さて、なんやかんやで油っこい肉の香りを換気しつつ、残りのメンバーを拾って、細川ささめかわ君の愛車は河原へと向かう。


 ちなみに僕ら以外は全員女子で、運転席――つまり細川君の後ろに座っているのが白井しらいさん(33歳独身、第3話で細川君が落とした)で、真ん中が土肥どいさん(27歳独身、第5話で細川君が落とした)、そして僕の後ろが一戸いちのへさん(27歳独身、第5話で細川君が落とした)である。


 おわかりいただけるだろうか。

 この悪魔的偶然。

 経理課一係の『かしまし娘』がそろったのである。そろっちゃったのである。

 

 えっ? これ絶対何か裏で手をまわしたよね?

 僕降りて良いかな? あのね、ルームミラー越しに白井さんがめっちゃにらんで来るんですけど。


『何でモヤシが隣座ってんだコラ』


 そんなメッセージが鏡越しというか、何ならもうダイレクトに伝わって来るというか、あの、自撮り棒で脇腹刺すのやめてもらえませんでしょうか。あと僕はモヤシじゃなくてはやしです。あっ、どさくさに紛れて自己紹介しちゃった! 9話で自己紹介っていうのも新しいと思うんだけど、僕、林って言います。大林でもなければ小林でもない、『林系名字』の真ん中辺り、林です! 名前は秘密にしておきますね。需要もないでしょうし、恥ずかしいので。


 ――などと、僕が後ろの『女子の皮を被った狼』に震えていた時である。


 ドン、だったか、バン、だったか、とにかくそんな大きな音がして、僕らを乗せた車が大きく揺れた。幸いなことに、高速でもなく、車も人もあまり通らないさびれた旧国道だったため、大きな事故にはならなかったけど。


 ――来た。


 そう思ったのはきっと僕だけはないはず。

 皆さんもちょっと期待しちゃうでしょ? ね? 

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