【上級編】高男子力男子、課内レクにて

第7話 高男子力男子とおむかえ

 とうとうこの季節がやってきてしまった。


 我らがあけぼの文具堂本社経理課夏の風物詩、課内レクである。


 毎年毎年どういうわけだか馬鹿の一つ覚えのように河原でBBQをするのだが、それは釣りをしたい社長石やしろながし係長の強い希望でもあるし、会社の金で肉を食べたいという一部の女子の強い希望でもあるし、ここぞとばかりに女子力を持ち出してやろうとギラついている一部の女子の強い希望でもあるから仕方がない。


 とにかくまぁ、発言力を持った一部の人間の強い希望によって決定されるのだ。ここに民主主義は存在しない。

 ちなみに男性社員はというと、本当は温泉にでもゆっくり浸かってデスクワークでコチコチに凝り固まった首肩腰を癒したいというのが大半の意見なのだが、聞き入れられたことは一度もないらしい。温泉なんて慰安旅行で行くじゃない、と言われればそれまでなのだ。



 そんな欲望が渦巻くこの課内レク。正直僕なんかは面倒だなって思ってるわけなんだけれども、今年は違う。


 今年は何と、細川ささめかわ君の車に同乗させてもらえることになったのである。ちなみにこの課内レク、とはいっても経理課全員が行くわけではない。理由は単純、人が多すぎるからだ。

 なので、係毎に分かれて日時や目的地を決めるのである。だからこそ毎年BBQになるわけだ。


 そして、経費節減のため、レンタカーではなく、各自のマイカーで現地まで向かうことになっているのだが、皆が皆車を持っているわけではないし、あるとしても一人一台にしてしまうと駐車スペースの確保も難しい。


 そんなわけで、車を持っている人のところに数人が乗り合う形となる。メンツはくじで決める。


 

 ――というわけで、僕はこの先20年分くらいの運をすべて使い切り、細川君の車に乗るというこのプラチナチケットを手に入れたのである。


 もしかしたら明日には死ぬかもしれない(何せ持ち運0だから)この僕が間近で観察した男子力の集大成を、(字数の関係で)明日から全力でお伝えしようと思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る