桜の記憶
別に飛ばなくて良いだろ。
そんな愚痴がこぼれかけ、直前で飲み込む。
頭の中に、ふと思い出す光景があった。
あれは確か、学校の教室でのやり取りだったか。
“――あたしはあなたを信頼してるの”
以前言っていた、彼女の言葉。
この意識は、今もまだ彼女の中で変わることなくあるのだろうか。
「あ、いざとなったらあれかも。雄治の家に住み着いて部屋奪ったりとかしてみたり。雄治の部屋、結構広いもんね」
一つの小さな問題が解決しても、まだ彼女がこの世界で孤独なことには変わりがない。
それどころか、真実を知ったことでより孤独感は増大しているのではないか。
それゆえに、人間としてこの世界に加わり生きていきたいと思っているのであれば。
(なんとも、重い話だな)
冷静になって彼女の心情を想像したら、鉛のような鈍いため息が漏れた。
こんな重い問題を俺にだけ支えさせようとするのだから、堪ったもんじゃない。
「真面目な顔になってるけど、どうしたの? 酷いこと言ったの反省してる?」
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