桜の記憶

「昨日は寝るの遅くなったからな。寝不足なんだよ」


 数回強く瞬きをしながら答え、俺は普段と変わらない桜をじっと眺める。


 この少女を世界に留める設定の紙は、話し合いの末俺が管理することとなった。


 桜本人の言い分としては、


「そんなの渡されても、あたし絶対なくすもん」


 というあまりにも無責任なものであり、相変わらず馬鹿だろと思わされたがその後に続いた言葉に俺は、出かけた文句を飲み込む羽目になってしまった。


「それに、雄治が持っててくれるなら安心だから」


 これでは、文句どころかどう反応を返して良いのかも迷ってしまう。


 そんなことがあって、例の紙は今俺の部屋の机に保管されている。


「またゲーム? 今より頭馬鹿になるよ?」


「うるせぇよ。つーか、お前にだけは言われたくねぇ」


 呆れたように言ってくる桜の額を軽く小突き、俺は歩くスピードを速める。


「むぅ……人が心配してあげてるのに」


 速めたスピードにあっさりと追いつき並びながら、頬を僅かに膨らます桜。

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