桜の記憶

 そんな閃きで、俺は桜に周囲に生息している動物を操作できるかを確認し、計画に綻びができぬくらい強力な支配をするよう頼んだ。


 距離が近ければ近いほど威力が増す桜の能力の特性を生かすため、山中を走り回ってもらったわけだが、ガーディアンに発見されるかもしれないというデメリットを何とか回避できたのは幸いだったと言えるだろう。


 そして、桜の能力により“天敵である片桐を攻撃しなければならない”というような刷り込みをされた動物たちは、一斉に片桐へ集中する。


 正直な話、羽虫程度の生物までコントロールできるとは思っていなかったため、これに関しては心強い誤算だった。


 桜の能力に支配されているとは言え、攻撃を仕掛けるのは片桐の物語に無関係な動物たち。


 ガーディアンに狙われる対象にもならない彼らは、俺の予想通りこうして役割を果たしてくれた。


 そしてもう一つ、攻撃とは別の命令を刷り込ませたのがここにいる二匹のネズミだ。


 片桐が所有している手帳とライターを奪う役割。


 これもまた、完璧に勤めを果たしてくれた。

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