桜の記憶

 ここまでくれば、後はもう最後の仕上げを残すだけ。


「桜」


「うん」


 奪ったライターを桜に渡し、着火させる。


 その光を頼りに手帳を開くと、俺はサクラに関係する設定が書かれたページを確認した。


「……さすが主人公だな。探す手間が省ける」


 手帳を開いてすぐ。


 最初の二ページが既に、サクラに関するデータで埋められている。


 真っ先に考えた設定だったのだろうが、これもまた良い意味での誤算。


(ここにきて運が巡ってきたか)


 このままスムーズにいけば、決着も早い。


 念のため、他のページもざっと確認してサクラ個人に関係する設定はないかを調べてみる。


 細かい設定が書き込まれている箇所が多く気が揉めるが、焦るわけにはいかない。


 速読ができるほど読む行為には親しみがないため、必死に指で文字を追う。


 途中で片桐の様子にも注意を払うが、まともに動くこともできずにもがき、サンドワームたちも飛び回る羽虫と小動物たちに夢中でこちらを気にする気配はなかった。


 そもそも片桐を守ることを優先する設定ならば、現状を維持する限り自分たちが狙われる心配はない。

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