桜の記憶
こちらに気づいていなかったわけでもないのだろう。
片桐はわざとらしく動かしていた手を止めると、澄ました態度で顔を上げてきた。
「おかえり……と言ったらおかしいか。サクラは一緒じゃないようだけど、見つからなかったのかな?」
パタリと手帳を閉じて立ち上がると、片桐は軽く尻を叩き埃を払う。
「でも、ガーディアンが引き返してこないってことはまだサクラは生きてるはずだ。すぐ死ぬかと思ってたけど、なかなか頑張るな」
相変わらず余裕綽々な声を一旦無視して、辺りを眺めて他に敵がいないことを確かめる。
見える範囲には気配はない。
自分ごときの五感がどれほど役に立つか疑問ではあったが、少なくとも姿は確認できなかった。
とは言うものの、それで安心できる相手ではない。
「……ついさっき思いついたんだけどよ」
片桐の会話には付き合うことなく、俺は俺で口を開く。
「桜にはお前を倒せないらしいけど、もっと単純に俺がお前をぶん殴って黙らせることは可能だったりするんじゃないのか?」
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