桜の記憶

 そんな彼女を見つめ返し、俺はここまでの記憶を思い返した。


 廃墟の前で、片桐が言っていたこと。周囲にどこまでも広がる木々と野草。


 そして、目の前にいる一人の少女。


 蒸すような残暑の熱に喉が渇いていることを今更に意識しながら、無理矢理唾を飲み込む。


「桜……、一つ思いついたぞ」


「え?」


「片桐を倒して、お前が生き残る方法。一つだけある」


 驚いたように、桜が目を丸くする。


「だけどこの方法はかなりリスクが高い。成功しなきゃ、絶対途中で死ぬことになる」


 それでも、やってみるべきか。


 見つめ返す視線で問いかけ、俺は桜の反応を待つ。


「それが成功したら、あたしたちの勝ち?」


 彼女の瞳に、期待の色が仄かに浮かぶ。


「ああ。たぶん、勝てる。でも、厳しいぞ?」


「……どういう方法なの?」


「それは――」


 問うてくる桜へ、たった今閃いた作戦を説明する。


 それを終始無言で聞き終えた彼女の反応は、微妙なものであったが。


「……無理か?」


「ううん、できると思う。でも、ガーディアンたちをうまく避けきれるかは難しいかな」

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