桜の記憶

「やっぱそこだよな……」


 徘徊するガーディアン。


 こいつらが突破口を塞ぐ最大の壁になってしまっている。


「でも、今雄治が言った方法しかないなら、あたしやってみるよ」


 不安に対して踏ん切りをつけるように桜は、俯きかけた顔を戻して言ってくる。


「どうせ、何もしなければやられちゃうだけなんでしょ? だったら、やるだけやってみる。もちろん、成功することを前提に」


 でしょ? と言って小首を傾げる悪魔少女に苦笑して、俺は大きく息を吸い込みゆっくりと吐き出す。


 負け戦になるであろうこの戦いに、一縷の望みを託した悪あがき。


 この脆い望みにしがみ付かなければ、桜に未来はない。


「……無事にできたとして、準備にどれくらいかかる?」


「わかんないけど、スムーズにいけば十分くらい?」


 かなりギリギリのラインだと、俺は判断した。


 十分あれば、今は余裕で死ねる。


 時間をかければかけるほど、そして動き回ればまわるほど、彼女の生存率はゼロに近づくのだ。


「……本当に、一か八かだな」

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