桜の記憶

(どこまで化け物なんだよ……!)


 まるで特殊訓練を受けた戦闘部隊に狙われている気分を味わう。


 たっぷり五分は経過したか。


 やがて、ガーディアンたちは左右に別れるようにして闇の中へ消えていった。


 ほっと息をつき、その場にへたり込む。


 見つかっていたら死んでいた。そんな局面だったのだ。


「あんなの、どうやってやり過ごせば良いんだ? 接近されても気づけねぇぞ」


 愚痴をこぼし、項垂れる。


 いちいち士気を挫いてくれる奴らだ。


 そんな嫌味を脳裏に浮かべ、舌を鳴らす。


「雄治……、どうする?」


 心配そうに訊ねてくる少女へ、肩を竦めて応える。


「どうもしない。まずは進むだけだ」


 流れ出た血に誘われたか、気づけば顔の周りを蚊が飛び回っていた。


 鬱陶しいそれらを手で追い払いつつまた立ち上がり、歩みを再開しかけた瞬間。


「ん……?」


 ほとんど突発的に、俺はあることを閃いた。


 動きを止め、慎重にその閃きを吟味する。


「……これって、どうなんだ?」


「……?」


 突然独り言を言い出す俺を、桜が不思議そうに見つめる。

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