桜の記憶

(素人考えなのかもしれねぇけど……)


 どこか都合よく身を隠せるような場所はないかと辺りを窺いながら、皮肉気に胸中で呻く。


 距離をどれだけ詰めておくのがベストなのか、本当にこれが最善の選択肢であったのか、そんなことすら曖昧な、無謀としか言えない迷走。


 本当に、どうすれば良いのか。


「雄治……!」


 何メートル歩いただろうか。


 突然、桜が強張ったように身体を縮こまらせた。


「どうした?」


 怪訝に思いつつ声をかけると、桜はそっと前方を指差した。


 そちらに顔を向け、同時に俺も身体を硬直させる。


 暗闇の中でもよくわかった。


 俺たちが凝視する先に、二体のガーディアン。


 まだこちらに気づいていない様子ではあるが、安心できる距離でもない。


 周囲を見渡し、まるで幽霊のように音無く移動する敵を茂みに屈み込み観察する。


 おそらく、足音がないのはほんの僅か空中に浮遊しているためだろう。


 そして、草木が群生している場所にもかかわらず、奴らはまったく枝葉に触れている気配がない。


 でかい図体でここまで無駄なく敵を追い詰めようとするその追跡能力に、胸がざわめく。

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