桜の記憶
「――桜、逃げろ!」
抱きかかえていた桜を引き剥がし、無理矢理立ち上がらせる。
このままじっとしていれば、数分かからず桜は死ぬ。
何としてでも逃げ延びさせなければ全ておしまいだ。
「でも、雄治は……」
「お前が狙われてるって言ってんだろ! 俺は心配ねぇからお前は本気で逃げることだけ考えろ!」
この状況で戸惑う様子の桜に、怒声を浴びせる。
余裕がない。
「こいつの能力は俺には無害だ! だから、お前は逃げ延びることに専念するんだ、良いな?」
不安そうに視線をさ迷わせ、桜はすぐに頷いた。
彼女の身体は既に負傷している。
どこまで余力があるかはわからない。
それでも、反転して森の中へと駆け出した桜は人間離れしたスピードだった。
その後ろ姿はすぐに闇と木々の中へ消えていった。
「甘いね、長沢くん。ガーディアンはサクラより性能は上。全てのスペックが上回ってるんだよ」
その声と共に、ガーディアン達が横を駆け抜け桜を追走し始める。
そのスピードは、桜より速い。
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