桜の記憶
友人と交わす世間話のような言い方が、酷くこの場では浮いて耳に届く。
片桐の言っていることはわかる。
自分も以前に何かのゲームの攻略本か初回特典の冊子でそういったものを見たことはあった。
「つまり、まだ彼女は未完成。だから設定も曖昧なんだよ。でも安心してくれ。今回のサクラのデータを元に、次はちゃんとしたサクラを考えだすから。そしたらまた、きみと出会うこともあるかもしれない。たぶん、出現するのは同じ場所。この廃墟になるのかな」
暗いシルエットの廃墟を振り仰ぎ、片桐は口を閉じた。
「意味がわかんねぇ。殺す理由になってねぇだろうが!」
「……だから、そのサクラはもう用無しなんだよ。どうせ捨てるなら、最後に遊んでから捨てた方が有意義でしょ? ってこと」
スッと、片桐の目が桜に移る。
「創り物でも、身体震わせて血を流すんだもんな。僕の能力は着実にリアルな作品を生み出せるようになってきてる」
薄く張り付けていた笑みが、残酷に歪んだ。
「さぁ、物語を先に進めよう」
片桐の合図で、ガーディアンが動き出す。
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