桜の記憶
不条理。
一瞬で、何もできぬまま追い詰められて、頭に浮かんだのはただそれだけだった。
桜は片桐の創りだしたキャラでしかない。
この際、その事実を受け入れても良い。
というか、受け入れるしかないのだろう。
ただそれなら、せめて能力を解除して普通に消すだけでも良いんじゃないのか?
ここまで一方的にいたぶって、そして殺すことに何の意味がある?
「記憶を無くした悪魔少女が、異世界で殺され一人寂しく散っていく。そんなストーリーを展開するのも楽しくないかな? 救いのない物語としてさ」
「何……?」
ゆっくりとこちらに歩み寄りながら、片桐が上機嫌に告げてくる。
「長沢くん、きみはサクラを気に入ってくれているのかい? だとしたら、創り手としては嬉しいな。ありがとう。でもね……」
ちょうど五メートルくらいの距離を置いて、片桐は足を止めた。
「申し訳ないけど、そのサクラは初期設定のキャラなんだ。言わば、試作段階。ほら、よくあるだろ? ゲームやアニメなんかの設定資料集とかでさ、登場キャラの初期デザインを描いた絵とか。見たことない?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます