桜の記憶
「言ったはずだろ、サクラ。設定上、きみは僕に攻撃はできない。能力はもちろん、物理的にもね」
眼前に止まる拳を悠然とした様子で見つめながら、片桐が言う。
「きみは今日、戦闘の末ガーディアンに殺される。そういう物語だ。大人しく自分のストーリーを全うしなよ」
パチン、と片桐がまた指を鳴らす。
「――!」
すると、桜の周囲にさらに四体のガーディアンが出現した。
咄嗟に後ろへ跳躍し、桜が俺の側まで戻ってきた。
「雄治、どうしよう……。あたし、ほんとにあの人を攻撃できないよ。身体が勝手に動かなくなったの……」
ちらりとこちらを見て、桜は心細い声をかけてくる。
「あたし、本当にあの人が創ったものなの? あたし……悪魔じゃないの?」
「桜……」
自分の意思とは裏腹に片桐へ触れることすらできなかったことで、彼女の中で何か悟るものがあったのか。
こんなネガティブな彼女を、俺は初めて見てしまった。
「あたしの帰る場所は……」
自らの手を見つめ、うわ言のような呟きを口にする桜の先で、ガーディアンが動いた。
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