桜の記憶

「そうだね。俺もそろそろ帰らないと。親は心配しないだろうけど、ゆっくりゲームする時間は欲しいし」


 有紀よりも深刻さの薄い表情で、根崎も賛同して頷いた。


 それから、ふと気づいたように桜へ顔を向ける。


「夜月さん、食べ終えたばかりだけどもうちょっと休んでった方が良いかな?」


「ん? あたしは別に平気だよ。こっちもこの後やることあるし」


 根崎の気遣いを首を振って払い、桜は少し残っていたジンジャエールを飲み干し立ち上がった。


「じゃあ、雄治お会計よろしくね」


「……へいへい」


 俺たち三人も席を立ち、レジへ向かい支払いを済ます。


 当然、ここは根崎ときっちり半分ずつで割り勘しておく。


 外へ出ると、自分たちのような遊び帰りと思しき人たちが足早に行き来している光景が目に映った。


 休日のため、さすがにサラリーマンらしき姿はほとんどない。


「今日は楽しかったよ。ゲームで負けた出費は痛かったけど、また機会があったらリベンジさせてほしいな」


 財布をポケットにしまいながら、根崎が女子二人を振り返る。

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