桜の記憶

 仮にここで二人に相談したとしたら、いったいどんな反応を示すだろう。


 する必要はないと結論を下したばかりの事柄に、そんな疑問が浮かぶ。


 桜によって記憶を改竄されている時点で、話す内容全てを鵜呑みにしてくれる可能性は皆無に等しい。


 桜が悪い奴に狙われているとでも言えばそこは信用する望みは十分あるが、それを話して結局何かが進展するわけでもないのが現実だ。


 大体、そんなことをしたら桜が良い顔をしないだろう。


(警察だって、役に立つとは思えねぇしな……)


 異世界の化物を操る奴がいると言って動く組織ではないし、事件が起きてからじゃなきゃまともに捜査だってしてくれない。


 百歩譲って動いたとしても、勝てる保証すらない相手なのだ。


(打開策なんかあるわけない、か……)


 桜自身がどうにかする以外方法がない。


 結局はそこに行き着く。


 彼女しか、この問題を解決することはできない。


「そろそろ出よっか。あんまり遅くなるとうちのお父さんうるさいから」


 桜が料理を完食するのを確認すると、有紀が自分の時計を見ながら言ってきた。

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