桜の記憶

「昨日は本屋を調べようとして、中に入る手段考えてたらあの男の人が現れたんでしょ? あたしがいつ戦ったの?」


 そう言ってくる悪魔少女の口調は、ふざけているというよりも話の筋が掴めなく困っているような、そんなニュアンスを帯びている響きがあった。


「桜……お前、まさかとは思うけど、更に記憶無くしたのか?」


「えー? そんなことないと思うけど」


「片桐ってやつが精霊召喚したのは覚えてるよな?」


「うん、アスカだよね?」


 コクリと頷く桜。


「そいつに周りの破壊痕と身体の擦り傷治してもらったのは、どうだ?」


「…………あ、そう言われてみれば。あれ、どうして壊れてたりしたの?」


「いや、だからお前が狼男と戦ってたからだろ」


「狼男と……? そんなの見た覚えすらないんだけどなぁ。でも、あたしが怪我してたのは確かだよね……」


 顎に手をやりながら唸る桜を観察する限り、不真面目な様子は窺えない。


 となると、本気で昨夜のバトルを忘れてしまってることになる。


(頭かなり強く打ち付けてたから、それが原因か? でも……)

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