桜の記憶
どこまでも能天気な態度で、桜は喋る。
こちらが本気で心配し不安にもなっているというのに、ここまであっけらかんとしていられるとさすがに腹立たしい気分にもなるが、そこはぐっと我慢した。
「じゃあもし、今回発生した事件がお前と関係していたとしたらどうするんだ?」
お気楽な顔から目を逸らすような心地で、誰もいない校庭に首を向ける。
雨で濡れた土が、まるで沈殿する泥のように見えた。
「あたしと?」
「殺された人、身体のあちこちを喰い千切られたみたいになってたって言ってただろ? 冷静に考えてみれば、そんなの人間技とは思えない。絶対にないとは言い切れないけど、ちょっと尋常じゃないんだよ」
「つまり、あたしと同じように別の世界から来た誰かの仕業かもってこと?」
「その可能性は高いんじゃないか? 昨日桜が感じた視線も、事件が起きた場所の近くなんだしさ」
この言葉に、桜が逡巡するくらいの反応はみせるかと期待していたが、どうやら思い通りにはならないものらしい。
悩むどころか逆に顔を輝かせると、傍目にもわかるほどの得意そうな表情で嬉しそうに言葉を返してきた。
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