桜の記憶

「そういうんじゃねーよ」


 即座に顔をしかめる桜へ首を横に振りながら、俺は話を続ける。


「今朝話したし、クラスや周りでも噂になってるだろ? 駅前で起きたっていう変な事件。犯人はまだ捕まってねぇし、たぶん駅前周辺は警察が徘徊してると思うんだよ。だから、今回は一旦見送るか、別の計画立てた方が良いんじゃないかと思ってさ」


「どうして?」


「……いや、どうしてって。お前人の話をちゃんと聞けよ」


 眉根を寄せて疑問符を浮かべる桜に、ガクリと肩を落とす。


 ここまでの説明で普通は理解できそうな気がするのだが……。


「あのな、警察に見つかったらいろいろ面倒なことになるし、犯人と出くわしたら危険だろって意味だよ。少なくとも、本屋に忍び込むなんてことは絶対できないからな。ただでさえ防犯設備だって設置してるんだろうし」


「警察なんて、全員遠ざければ問題ないじゃん。人殺しが出てきても、あたしがやっつけちゃえば済むし。あ、自分から逮捕されてもらうように記憶を変えた方が楽かな。防犯設備はよくわかんないからその時に考える」

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