桜の記憶
ぎりぎり自動ドアが開かない位置で立ち止まる。
「……ん?」
だが、桜はそんな俺に構うことなくそのまま店の外へ歩いていく。
「おい、桜。どこ行くつもりだよ?」
自動ドアを抜けた彼女の背に慌てて声をかけるも、聞こえているのかいないのかそのまま歩き去ってしまった。
「……何を考えてんだあいつは」
外へ出てすぐに右折したため、既に姿は見えない。
一瞬、すぐに追いかけた方が良いのか迷ったが、有紀を待つことを優先する決断を下す。
ここで俺までいなくなれば、有紀は間違いなく困惑するだろうし、無意味に店内を探し回ったりさせてしまいそうだ。
それに、仮にこのまま桜がいなくなったとしても、どうせ明日にはまた顔を合わせる。
その時に文句の一つでも言ってやればいい。
「お待たせ」
そんな事を考えてる間に、会計を終えた有紀が側に寄ってきた。
「あれ? 夜月さんは?」
きょろきょろと周りを見渡す有紀に、親指で外を差し示す。
「何か知らんけど、先に出てった」
「え? 帰っちゃったの?」
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