桜の記憶

「……だって雄治、白峰さんとの約束はあっさり受け入れるんだもの。それって幼なじみだからなんでしょう?」


 しばらく呆然と桜を見つめていたが、やがてその拗ねたような態度にピンとくる。


 つまるところこの悪魔、


「……お前、焼きもち妬いてるだろ?」


「だってー!」


 図星だったらしい。


 桜は両手を小刻みに振りながら、不服そうに頬を膨らませた。


「あたしのお願いはすっぽかしたり渋ったりしたくせに、白峰さんの時は快諾するんだもん、納得できないじゃない!」


「だもんって、子供かお前は」


 あまりにくだらない内容に呆れながら、深々とため息を吐き出す。


「あのな、お前と有紀との頼みは根本的に難易度が違い過ぎる」


 左腕で頬杖をつきながら、俺は桜に指を突きつけた。


「帰りに寄り道するだけの話と、悪魔の記憶を戻す方法見つける話。どう考えたって前者の方が受け入れやすいだろうが」


「ん~……、じゃあ言い方変える」


「あ?」


「今日の放課後、寄り道して記憶探すから付き合って?」


「そういうことを言ってんじゃねーよ!」

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