桜の記憶

「はぁ? い、いきなり現れて何なんだよお前は!?」


 開口一番に告げられたその言葉に、つい間抜けな声を返す。


 だが、そんな反応が癪に触ったのか、サクラは更に顔をしかめて言葉を吐き出してきた。


「あなた、神社かお寺に行けばあたしの問題解決するって言ったでしょう?」


「あ、ああ。……行ってきたの?」


「行ったわよ、言われた通りに。で、何? どっちも変なボロ屋が建ってるだけで何にもないじゃない。お寺の方には一応人間が住んでたけど、あなたがあたしの記憶戻せる人なのって聞いたら、最近はそういう変な遊びが流行っているのかい? ってどこか同情するように言われただけだし、何の成果も無かったわ。なんかさ、お寺から帰る時すっごい切ない気分になっちゃった」


「いや、なっちゃった言われても……」


「あなたのせいでしょ!」


 ピシャリと告げられ、仕方なく俺は口を閉ざす。


「ちょっと、何騒いでんのよ? 誰か来てるの?」


 かなりの不条理感を味わいつつ、現状の解決を模索し始めた矢先に、突然部屋の外から姉貴の声が聞こえてきた。

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