桜の記憶

 そんな慣れ親しんだ生活が、二学期も相変わらず続いていく。


(――はずだったんだけどな)


 購買で買ってきた昼飯を済ませ、ゲームによって削られた睡眠時間を今のうちに補っておこうかと微睡んでいた俺の前に、一人の女子が現れたのはほんの三分ほど前。


 何の用かと見上げる俺を無言で見つめ、手に持っていたおにぎりを机に置くと、そのままずっとこちらの様子を窺うように立ち尽くしている。


 そんな相手の意図が全く掴めず、俺はただひたすらおにぎりを見つめ続けていた。


(さて、どうしたもんか……)


 一瞬だけ目の前にあるおにぎりから女子へ視線を移しつつ、胸中で呻く。


 夜月やげつ さくら


 二学期から突然我がクラスに出現したイレギュラー。


「これ、何のつもりだ?」


 そのイレギュラーを上目遣いに睨み、俺は仕方なく口を開く。


 すると、相手も待っていましたと言わんばかりに即座に言葉を返してきた。


「何のつもり? おにぎりって普通は食べる物でしょう? せっかく持ってきてあげたんだから食べなさいよ」

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