桜の記憶

「何って、サバイバルゲームの……つっても女子にゃわかんねーのかな。きみさ、ここで何してんの? ひょっとして家出とか?」


 サバゲーの会話をする必要性の無さを冷静に自覚し、俺はもっと本質的な会話を試みることにする。


「いえで? よくわからないけど、あたしがここにいるのは他に隠れて生活できる場所が見つからなかったからで、別に悪いことは何もしてない……つもりだけど」


 最後の方は何故か自信なさげに彼女は言った。


「隠れて生活って、逃亡者じゃあるまいし。まさか、誰かに付け狙われてるわけでもないんだろ? もしそうなら、警察にでも行った方が無難じゃね?」


 粘着質な彼氏にでも追われてるのか。


 もしもそういった理由でここにいたなら、俺に敵意を向けてまで警戒してきたことには納得できる。


 しかし、いつから身を潜めているのか知らないが、何日もこんな場所で乞食みたいな暮らしをしていても仕方がないだろうに。


「けいさつ? そこに行くと、あたしは助けてもらえるの? あたしの記憶を元に戻せる術士とかもいる?」

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