第7話 リルノ・コーフォーリア

 その女の子は自分を、「リルノ・コーフォーリア」と名乗った。


 何か事情があると踏んで、有志連合ギルドの談話室を借りて、リルノの話を聞く事にした。

「あたしはここから北西にある国の人間だ。だけど望んでここに来た訳じゃないんだ。いきなり後ろから布の袋を被せられ抱えられ、気がついたら見知らぬ部屋に連れ込まれていたんだ。そこで見張りの男たちが会話してるのを聞いたんだ。「あれなら奴隷として高く売れる」とか「バラして内臓だけの方がもっといい」とか。とにかく恐ろしかった……」


「つまりは『人身売買』や『臓器売買』、といった所じゃのう」

 首を横に振って、とても信じられない様子のゲムじぃだった。

「それでキミは逃げてきた、と」

 マツハは話の先をうながす。

「そう。逃げてきたら、この国にいたんだ。軍はアテにならない。私の国では軍人は横柄で横暴だからな。そんなヤツらに助けられるくらいなら、冒険者の方がまだちゃんと扱ってくれる、そう思ったんだ」

 一応、話の筋は通っている。もしそんな人身売買をしてる組織があるのなら、まずは有志連合ギルドに報告を上げた方がいいだろう、そう僕は思った。


 リルノは再度、頭を下げて僕らに頼み込む。

「頼む! 助けてくれ。あたしの国は内乱で荒れている。ここにいてもまたさらわれるかも知れない。行き場が無いんだ」

 彼女の服装は、服と言うにはあまりに粗末だった。

 胸と腰は細い布地が巻かれているだけ。同じ細い布地が足にも巻かれて足裏を保護している。そして大きな布の真ん中に穴を空け、そこに首を入れてポンチョのようにしていた。布も有り合わせの汚いものだし、何より綺麗であろう赤毛の頭髪は、泥で薄汚れていて、所々クセが付いていてハネていた。

 年齢は僕より少し下だろうか。幼さの残る顔は、汚れて肌荒れを起こしていた。


「とりあえず有志連合ギルドの方には報告しとかないと。それから服装がソレでは、あまりに可哀想だよ。お風呂とかも入りたいよね? 多分、それらが終わってから、話の続きをしようよ」

 僕の提案に、マツハもゲムじぃも異存は無いようだった。しかし問題がひとつあった。

「しかし、男所帯のウチらじゃあ、女の子の服装とかはわからないぜ。どうするんだ?」

 マツハの言う事ももっともだ。一緒に風呂に入る訳にもいかない。

「ちょっとしたツテがあるんだ。まずはそこに行こう。みんな、いいかな?」

 僕の提案にうなずく三人。そうと決まれば行動は早い方がいいだろう。





 こうして新たな出会いがあり、新たな始まりが出来上がった訳で。

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