第6話 新たな出会い

 オークの群れを討伐した後、僕らは王都に帰還し、討伐部位をギルドに渡して報酬をもらう。それで終了のはずだった。

「え? 報告書……ですか?」

 ギルドの窓口で、受付のおじさんから唐突に話をされた。

「はい。今回の討伐に関して、どのような方法を取ったのかなど、詳細を報告して頂きたい、と」


 以前に所属していた勇士ロームのチームでも、魔物の討伐したら報酬をもらってそれで終わりだった。もしそのような雑用があるのなら、真っ先に僕に割り振られるであろう仕事のはず。それを今回は突然言われたのだ。


「何か不都合でも?」

 優しい物腰でも、拒否権は無いぞという口調で、窓口のおじさんが問うてくる。

 別段、断る理由など無いので、とりあえずうなずく。

「まあ……、少し時間を頂ければ……」

「ありがとうございます。特に期限はありませんので、少し遅れても大丈夫ですからね。報告書は窓口に提出して下さい」

 窓口のおじさんは、ニコニコ顔で受け答えしてくれた。ひと仕事終わった感じだ。


──────


 報告書の提出に関して、ちょっとした違和感を感じつつも、僕は仲間たちと合流する。

「待ったぞな、レクア。……どうしたんじゃ? 難しい顔をしおって?」

 僕の様子がおかしいのを感じたのか、出迎えたゲムじぃが訪ねてくる。

「うん、今回のオークの群れの討伐に関して、詳細な報告書を出してくれって言われてね。今までそんな事を言われた事が無かったからね」


「ま、そんなのサクッと終わらせりゃいいだろ。そこまでの負担じゃないだろうし。俺は早く風呂に行きたいぜ」

 細かい事は気にしないマツハは、早く風呂に入って、『火球ファイアボール』のススを洗い流したいと思っているようだった。確かに金属鎧プレートメイルのそこかしこには、ススがついて薄く汚れていた。


「じゃあ、僕は武器屋のおっちゃんの所で鎧の修繕。マツハは風呂。ゲムじぃは宿屋の手配。って事でいいかな?」

「わかった。集合はここ窓口前でいいか?」


 そうやって僕らが話をしていると、僕らに近付く一人の人影が、ゆらりと揺れていた。

「あ……あんたたち、冒険者か?」

 少しかん高い可愛らしい女の子の声が、僕らにかけられる。歌い手として活躍すれば、なかなかに人気が出そうな、そんな清んだ女の子の声だった。

 一瞬、僕らに声がかけられている事がわからなかったから、反応が少し遅れてしまった。

「えっと……。僕らの事?」

「そっ、そうだ。あ……あの、あたしを仲間にしてくれ!」


 唐突な申し出に、僕ら三人ともお互いを見回す。仲間にしてくれと言われても、どう判断していいものかわからなかった。

「荷物持ちでも飯炊きでも、何でもする。だから仲間に入れてほしい。頼む! この通りだ!」


 小さな女の子は、頭を下げて僕らに頼み込む。何か事情があるようだし、どうしようか仲間内で話す必要があるようだ。

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