第3話 いざ討伐へ

 豚鼻の魔物である『オーク』。単体ではそれほどの脅威ではないが、群れで襲われれば、手練れの戦士であっても対抗できない魔物である。今回は群れで襲ってくる事が予想できる所なので、それなりの作戦を練る必要もある。


「それでどうするんだ、レクア? 何か作戦があるって言っていたが?」

 質問してくるマツハに、僕は酷なお願いをする。

重戦士へヴィウォリアーのマツハだらこそ出来る、そんな重要な役割をやってもらおうと思ってる。断ってもいいよ?」

 僕のお願いに、胸を「ドン!」と叩いて応じる。

「何言ってやがる。俺しか出来ない事なら、やってやろうじゃねぇか! さあ、話してみな」

「じゃあ……」

 と言う事で、三人で作戦を話し合った。



──────



 有志連合ギルドのある王都から北東の国境までは、歩いて半日もあれば到着できる。そこでオークの群れを待ち構える。

 国境にはレンガで作られた城壁がある。それが大人二人が通れる隙間を作りながら断続的に続き、三重に作られている。

 僕とゲムじぃはその一番前の城壁の裏に隠れている。オークはその鼻が特徴で、嗅覚が優れている。そのため、隠れている僕らが気付かれないよう、落ち葉や土で身体を汚し、匂いを消している。

 そして肝心のマツハは、独り城壁の先に仁王立ちして、オークの群れを待ち構える。もちろん僕のサポート魔法である『シールド』・『持久力タフネス』・『ストレンクス』を三重にかけて、体勢は万全を期している。

 その中でも重要な『魔法防御レジスト』は、最強度で五重にかけてある。これが肝心だ。


─────


「マツハには囮になって敵を引き付けておいてもらいたいんだ」

 僕の作戦に、真剣な顔で聞き入る二人。

「敵をすべてマツハに向かわせた所で、『シールド』を敵の群れを囲うように配置し、その中にゲムじぃの攻撃魔法を打ち込んで一網打尽いちもうだじんにする。できれば『火球ファイアボール』がいいな」


「ち、ちょっと待ってくれ。『火球ファイアボール』の真っ只中じゃ、俺もタダじゃ済まないんじゃ?」

 心配するマツハに、僕はこう解説を入れる。

「『火球ファイアボール』の効果は、中心から外側に広がる熱と爆風。つまり中心にいれば、そこまでの熱と爆風の影響は受けないよ。ちゃんと『魔法防御レジスト』をかけておけば、ほぼ防げるはず。音と酸欠にだけ注意すれば大丈夫だよ」


 多少危険な囮役だが、これが成功すれば一気に魔物の群れを一掃できる。


「まあ、レクアがそこまで言うなら、大丈夫か……。信頼してるからな!」

 念を押すマツハ。

「大丈夫。ゲムじぃの魔法の宣言が終わったら、すぐに息を止めて耳をふさいで」

 こちらも念を押す。

「じゃあ、ワシは魔法の集中に専念するとしようかの。特大の『火球ファイアボール』をくれてやるわぃ」

 こちらは飄々としてるゲムじぃ。


 作戦は決まった。後は魔物たちがうまく動いてくれる事を願うばかりだ。

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