第2話 依頼が入る

 農業ギルドからの茶摘みの仕事が終わり、僕らは有志連合ギルドまで戻ってきた。茶園からの『依頼完了』の書類を持って、ギルドの窓口に向かう。

 いつもの品の良いおじさんが、何事か慌てて書類仕事をしている所に、僕が声をかけた。

「お疲れ様です。農業ギルドからの依頼を完了しました。その完了報告書の提出です」

 忙しくしていた所を申し訳ないが、こちらも完了の報告をしない事には、次の仕事が出来ないからだ。


 そうしたら窓口のおじさん、僕らの顔を見るなり慌てて仕事をしていた書類をその場に置き、僕らの方へ駆け寄ってきた。

「あああ。ちょうどあなた達がいましたね。すいませんが、早速仕事の依頼をお願いしたいのです。この仕事を受けて下さい!」

 バッと頭を下げ、僕らにお願いをする。窓口のおじさんは、かなり焦っているようだった。



──────



「つまりオークの群れの討伐……ですか」

 詳しく依頼の内容を聞くと、北東の国境の先の方から、オークという豚鼻の魔物たちが迫ってきているという事だった。その数およそ十。


「内容はわかりました。ですが、僕たちでなくても良かったのでは? 魔物討伐のチームは他にもいるのですから」

 僕の質問に、窓口のおじさんは一言、申し訳無さそうに質問を返した。

「あの……北西の国の内乱はご存知ですか?」

「ああ……なるほど」

 その質問だけで、ほとんどの事が理解できた。


 現在、このユースフェル王国の北西の先にある国は、先代の王様がお亡くなりになり、その後継者争いが勃発していたのだった。

 現在の所、王様の子供である王子を擁立する一派と、貴族の中でも特に権力を持った大貴族たちを擁立する一派の、ふたつで激しい争いをしていた。

 その余波がこの国にも影響を及ぼし、北西の国境近くには、その北西の王国から逃げてきた難民がテント村を作っていて、その援助をこの国が行っていたのだった。


「今は国境近くのテント村で、有志連合ギルドが援助に回っています。そちらに人手を振り分けていますので、どうしても魔物討伐がおろそかになっています。そんな時の魔物襲来の報告です。そちらに人手を割り振れない所で、あなた方が帰ってきた、と」

 つまり、人手が足りなくて僕らしか対応する人員がいない、という訳だ。


「こりゃ断れねぇな」

 マツハの意見に、僕らも賛同する。

「そうですね。やるしかないですね」

「そうじゃな。まあ、オークの群れなら何とかなるじゃろう」

 楽観的にゲムじぃが話す。


「あああ。有り難う御座います! 報酬は、色を付けてお支払いしますね」

 窓口のおじさんが、嬉しそうに安堵の言葉を重ねる。緊急事態なのだから仕方ない。


「では、現地に行きながら作戦を練りましょう。僕に作戦があります」

 僕の言葉に反応して、マツハとゲムじぃが顔を合わせる。そして頷き合う二人。

「よっしゃ! 急いで準備をしようぜ。レクアの作戦ってのも楽しみだ」


 なぜかウキウキなマツハであった。

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