第11話 討伐後の後始末。そしてまたクビ。

 苦労して魔物の群れを討伐した、その報告をすべく、僕たちは有志連合ゆうしれんごうギルドの窓口に来ていた。窓口にはいつもの品の良いおじさんが立っていて、僕たちが帰ってくるのに気付いて居住いを正し、労いの言葉と共に迎えてくれた。


「お疲れ様でした。どうやら、討伐はうまくいった様子ですね」

 勇士ロームは、手にしていたゴブリンやホブゴブリンの耳のいくつかを提出し、討伐の証とした。しかし、その数はいつもより少なかった。

「では、こちらの報酬はいつもの口座に振り込みでよろしいですかな?」

「ああ。たのむ」

 いつものぶっきらぼうな口調だ。そこには、ちょっと不満も混じっているように感じた。


 そこから今度は僕の番だ。

 僕が討伐したオーガの角のホブゴブリンとゴブリンシャーマンの耳を提出する。オーガの角があるだけで、討伐の報酬は段違いになる。

「ええと、こちらは?」

 不審に思った窓口のおじさんは、その扱いに困っているようだった。誰が討伐し、どこの口座に入金すればいいのか、わからなかったからだ。

「それは……」

 と、僕が言いかけた所で、勇士ロームが割って入る。

「それもウチのだ。俺の口座に振り込んでおいてくれ」

 あろう事か、他人の手柄を自分のものだと言い張ったのだ。さすがに僕はカチンときて、次の言葉を言おうとした所、

「いや、そのオーガの角らは、こっちのレクアが討伐した魔物だ。報酬はレクアにやってくれ」

 重戦士へヴィウォリアーのマツハが、弁護にまわってくれたのだった。

「証人が欲しいのなら、ワシもおるぞぃ」

 さらにゲムじぃまで弁護にまわってくれるのだから、心強い。


「そのオーガたちは、僕が討伐しました。報酬は僕にお願いします」

 二人の弁護を受けて、毅然とした態度で窓口のおじさんに対峙する。その言葉が届いたのか、おじさんも首を縦に振った。

「わかりました。ではレクアさんに報酬を差し上げましょう。少し時間を下さい」


 後ろで歯噛みをしているロームの気配があった。


 少しして、報酬が目の前に出される。金貨一枚に札束が十束ほど。金貨は貴重な品物なので、いかにオーガ討伐が難しいかを証明してくれていた。

 僕はそれらを革の袋に入れ、頭を下げる。

「有り難う御座いました。また宜しくお願いします」

 踵を返して、窓口から離れようとする。

「お、おい。約束通り、また雇ってやろうじゃねぇか。給料は今までの倍は出せるぜ」

 すれ違いざま、ロームが僕に声をかける。一応、約束の事は忘れてなかったようだった。


 そこで僕は、勇士ロームに向き直り、平然とした態度で言葉を並べる。

「あなたが『必要無い』と言うから、辞めさせたのではないですか? それを今更撤回するのも、情けないですよ。それに、元々もう戻るつもりもありません。それでは」

 僕はピシャリと言った。

 勇士ロームは言葉が出なかった。

 そして僕は歩き出す。







「さて、ワシも行くとするかのぅ。ワシの魔法も、ヤツの『魔力強化ダメージブースト』が無ければ、使い物にならんしのぅ」

 僕の後を追うように、チームから離れる事を宣言する魔術師ソーサラーのゲムじぃ。

「俺も抜けるよ。あいつの『シールド』が無きゃ、俺の身体がもたないからな」

 さらに重戦士へヴィウォリアーのマツハまで抜けると言い出した。


 勇士ロームは苦虫を噛み潰したような顔をしながら、恨み節に言い放った。

「あー、そうかい! 勝手にしな!」






 こうして、僕はまたクビになり、代わりにゲムじぃとマツハという仲間が加わり、新たなチームで活動する事になったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る