第8話 呼び戻される
「私では、あなた方の要望に応えられません。申し訳ありませんが、ここで辞めさせて頂きます」
突然辞めると言い出す新入り
「待てやゴルァ! 自分独りだけ逃げようたぁ、いい度胸してンじゃねぇか。違約金タップリ請求すんぞ!」
語気を荒くして制止する勇士ローム。しかしそんな脅しなど意に介さず、新入り
「ええ、どうぞご勝手に。死ぬよりマシですから」
転移の準備をする
「いや、ちょっと待て……。待て待て待て。少しでいい、時間をくれ。……そうかそれなら……」
何か考え事をしながら、動きを止める勇士ローム。いぶかしむ
「違約金に関してはチャラにしてやろうじゃねぇか。その代わり、ひとつ依頼を聞いて欲しい。なに、簡単な事さ。人を一人呼んできてくれ。『レクア・ボードウィル』ってヤツを」
──────
「今さらアイツが助けに来てくれるとでも? こちらから見限ったのに? それは虫が良すぎるだろ。今ならまだ引き返せる。戻ろう!」
「黙ってろ! この依頼は何としてでもこなす!」
強気な言葉とは裏腹に、その剣はあちこちに刃こぼれが見受けられ、血糊で曇っていた。レクアが抜けてから、手入れを全くしていなかったからだ。
「くそっ……。どうしてこうなっちまったんだよ……」
ロームの言葉だけが、むなしく響いていた。
──────
チョキン チョキン
僕は地道に、茶摘みに精を出していた。そろそろひとつ目のカゴがいっぱいになる頃だったろうか。僕の事を呼び止める茶園の係員の声があった。
「おーい、レクアさーん。お前さんにお客さんだでー」
「お客さん? 誰だろう……?」
とりあえずカゴと鋏をその場に置き、製茶所のある建物に戻る。そこには、黒のローブを纏った壮年の男性が立っていた。僕よりも一回り年齢は上だろうか。やはり見覚えは無い。
「あなたがレクアさん? やっと見つけましたよ。まさかこんな所にいるなんて」
黒いローブの男は、疲れた声を出して僕に言った。
「あの……。どちら様?」
僕の問いかけに答える前に、
「勇士ロームのチームに新しく入った
その言葉だけでピンと来た。
「勇士ロームは、あなたに戻ってくるように言っていました。そして現在、
僕は思わず天井を見上げて肩をすくめた。何だってクビになった僕を、今更ながら戻そうと言うのか。
「
おそらく嘘だろう。使うだけ使って捨てるだけ。そんな事が透けて見えるようだった。
しかし、僕は少しだけ頭の中を整理して考えてから、
「わかりました。行きましょう」
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