第2話 討伐後のメンテナンス
無事にトロール三匹の討伐が完了した我らがチーム。他のメンバーは「祝勝会だー!」と称して、呑みに繰り出している頃。
そんな中で僕は、
「トロールの討伐、お疲れ様でした。確かに討伐部位も確認しました。では、いつも通りに報酬は、勇士さまの口座に振り込みという事で」
「あ、はい。お願いします」
討伐したトロールの中指三本と、途中でついでに討伐したゴブリンの耳六つを窓口に提出し、報酬をお願いする。それから、借りていたテントと荷車の返却をして、手続きは終了だ。
「そう言えば、他のメンバーさんたちは祝勝会をなさっておられるようですが、あなたは出席しなくてよいのですか?」
窓口で対応している品の良い年配の係員が、不思議そうに僕に問いかける。もちろん何の罪悪感も無く。
「あー、ははは……。僕はチームの『臨時雇い』なので、そういうのには呼ばれないんですよ。残念ながら」
半分は本当で半分は嘘。そういう祝勝会は、どうにも苦手な性分なのだ。だから今回も出席はしていない。
「そうでしたか。……そうそう。今日は武器屋さんが早く店じまいをするそうですので、用事があるならお早めに行かれる事をオススメしますよ」
「ええっ! それはまずい。ありがとうございます。では、これで」
荷物を背負って足早に
──────
「よぅ、あんちゃん。今日も手入れかい?」
武器屋に慌てて入ると、いつもの髭モジャのおっちゃんが声をかけてくれる。
「今日、早めに店じまいするって聞いて、急いで来ました。また、鎧の手入れをお願いします」
魔物の討伐なんて危険な事をしていれば、武器・防具は必要になる。そういったアイテムの手入れもまた、必要な事なのだ。
「おうおう、ちょっと見せろ。……んん。こりゃ、少しだけ手直しすりゃ大丈夫だな」
「いつもありがとう御座います」
「いやぁ、いつもの事よ。それよりも、あんちゃんがチームに入ってから、鎧の痛みとかが減って、手入れとか軽くなったよな。あんちゃんのおかげだな」
僕は突然の言葉にびっくりして照れて、少しどもってしまった。
「あ、ああ。いや、その……。あ、剣の砥ぎは僕がやりますね」
お店の端にある砥石の前に座り、剣を抜いて刃を砥石に当てて前後にこするように動かす。それを見ていたおっちゃんは、
しばらくの時間が流れ、無言の空気が室内を固めていた。
「よぅ、あんちゃん。コッチは終わったぜ」
その空気を和らげるように、おっちゃんの言葉が響く。
「こちらの砥ぎも終わりです。ありがとう御座いますね、少し残業になってしまいましたね」
申し訳なさそうに僕が頭を下げると、おっちゃんは「がははははは」と、豪快に笑い飛ばす。
「なぁに、どうせお代は勇士さま持ちだ。しっかり請求しとくよ」
僕の背中をバンバンと叩く。武器屋のおっちゃんも、したたかな商売上手だ。そう思った。
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